新・異世界の最凶ボディーでハーレムを。一番しょぼい冒険【AI修正版】

第2話 竜人 ヴィー（AI修正済み）

朝、扉をノックされて目が覚める。

メイドさんらしき女性がお湯とお粥を渡して、俺を急かし、食べ終わるとすぐに俺の手を引いて納屋を出た。

いや、今の俺に女性は触らないでほしい。襲ってしまいそう。

昨日の女性は、多分絹江さんだと思うけど、店の玄関に椅子を出して座っていた。

「遅い！ ドラゴンの懸賞金は金貨10枚だよ！ 西の沼とダンジョンを見てきなさい！ 早く行きなさい！」とおばあさんは言い、俺はメイドさんに玄関から引っ張り出された。

「西の沼とダンジョンはどっち？」とメイドさんに聞いてみるけど「ダンジョン」とだけ言って指で示した。

まだ午前中で、しかも北半球なら北西の方角を指している。

太陽と反対側に向かって歩く、俺としては西に歩いているつもりだ。

昨日、俺がこの世界に来た場所を通り、そこからさらに西に向かう。

街はずれまで歩くと道は北に曲がり、正面には沼がある。

沼の大きさは野球場がすっぽり入るくらい。

川が曲がっていて、そこに水が溜まっている感じ。

ドラゴンの歩いた跡がそちらに向かっている。

俺は道なりに北へ向かう。そこから道は土になり、道というより細い道になった。

土が踏み固められた感じだ。

空が青く、空が高い。

夏の草の香りが空気の濃さを感じさせる。日本なら夏なんだろうな。

池の周りをぐるりと歩いていく。

その後は山道の林の中を歩く。

鳥がさえずり、虫が鳴いて、平和だ。

日本の田舎と変わらない。

つい、林の中に雑誌が落ちていないか探してしまう。

ここに来てから気持ちが落ち着かない、どうにかなりそうだ。

体感で1時間ほど歩く。30分くらいのところに納屋があったけど、完全に閉まっていた。

何やら洞窟のような入り口があるけど、変な感じだ。

外観は濃い緑色でぐるりと囲んで入り口を作っている。食虫植物のツルツルの表面を感じさせる。

大きさは学校の廊下の高さも幅も2倍にした感じだ。

アリがたくさん中に入っていく。

中からタランチュラくらいの大きさのクモが俺に飛びかかってくる。

反射的に踏み潰してしまった。

バフっとなって煙のようにクモは消え、足の下にビー玉サイズの赤黒い石が残った。

ゲームの演出みたいだと思ったけど、「ファイナル・ドラゴン・タクティクス」の設定ではダンジョンはなく、モンスターもいない。

あのゲームは基本的にキャラクター同士の戦いだ。

洞窟に入っていく虫たちは日本と変わらないサイズだけど、洞窟の中の虫は10倍サイズだ。

いくつか倒して、石を拾う、青黒いものや、暗い緑色のものもある。

ワラワラとたくさん出てくるわけじゃなくて、チラホラいる感じだ。

プチプチ踏むけど、特に攻撃してくる感じでもない。

あまり奥に入って入り口が閉じても怖いので、来た道を戻る。

左手、北だと思われる方向に、山が見える。

納屋があったところをよく見ると北へ向かう道がある。

道というか、草の生え方が弱いところがある。

だんだん草の高さが高くなり、背丈を越えたので引き返す。

西の沼に戻ってくる、池の北側だ。

池の西側、崖の下の窪みに黒い塊が見える、多分あれがドラゴンだろう。

その隣に人らしき影がある。

何をしているんだろう……。

沼にズブズブと入っていき、水面に手を突っ込んでいる。

バシャン！

人間より大きな魚が人に襲いかかったように見える。

人影は魚を掴んで陸に放り投げた。

陸でビチビチ跳ねている魚をドラゴンが首だけ動かして、パクッとひと飲みした。

沼に近づくだけで命を落としそうだ。

俺は少し池から距離を取る。

水辺に行くと人が食べられる、なんだか、恐ろしいこの世界。

人影がまた沼地に入っていく、何度か魚を取るようだ。

しばらく観察して鈴木商店に戻る。

おばあさんが椅子に座って接客中だけど、一喝してすぐに終わる。

「おばあさん、これ何？」と俺。

虫を踏みつぶして手に入れた石を見せる。

「あなた口が悪いね、絹江とお呼びなさい！」

このおばあさん女王様キャラ？ 俺には合わないな。

でも、グチグチよりも、さっぱりしていて話しやすいけど。

「これは魔石のかけらだよ、魔石のかけらは燃えるから、石炭とか言われる。赤黒いのが、炎の魔石のかけらだよ。燃えるけど熱を吸収するから、明かりの燃料になるんだね。沼はどうだった？」

沼は？ ってことは、あの食虫植物の超巨大なのがダンジョンでいいんだな。

「人がいて、沼の魚でドラゴンにエサをあげてた。ドラゴンは餌付けできるのか？」と俺。

「どうかしら、自分で考えなさい」と絹江おばあさん。

絹江おばあさんに腕で「あっちに行きなさい」とされたので、退散する。

玄関を出ると、メイドさんが笹で包んだおにぎりをくれて、竹筒の水筒も渡してくれた。

町はヨーロッパなのに、食事は和食。

鈴木商店だけかもしれないけど。

鈴木商店のある通りは商店街なんだろうけど、木の看板があって、文字が入っているだけだから何のお店かわからないし、入るのに勇気がいる。

町の人たちはワイシャツにズボンで、あまり日本と変わらない。制服みたいなものがなくて、鮮やかなものもないから、役所とかに行った時のみたいだ。

無駄口を叩かずに、さっさと歩いているから、人々は真面目そうだ。商店街みたいな賑やかさはなくて、ビジネス街って感じだ。

町をぶらぶらしてみるけど、公園や博物館とかもなくて、本屋も見当たらない。

雑誌は売ってないかな……。

やることがないので、西の沼地に戻る。

さっきは沼の北側にいたけど、今回は東側の町に近い方にいる。

池に近寄ると魚に食べられそうだから、ドラゴンの通った後の道の脇、林の中の乾いていそうな倒れた木に座る。

ドラゴンは丸まって動かず、人影も座っているのか動かない。

俺も座った状態で木にもたれかかり、少し考えたい。

ARコントローラーや、コンソールが出ることから、これは「ファイナル・ドラゴン・タクティクス」の世界だと思うんだけど、かと言ってダンジョンや魔石のかけらなどゲームにない設定がある。

と思えば、俺の気持ちはゲームの主人公のトキそのものだ。

普段ももちろんあるけど、こんなに頭がおかしくなるくらい強い気持ちは感じたことがない。

顔や体は触った感じ、今までの体みたいだ。異世界と「ファイナル・ドラゴン・タクティクス」を足して、2で割らない感じ、濃い。

「ファイナル・ドラゴン・タクティクス」だけでも、濃い作品なのに『一番しょぼい冒険』という問題作と融合とかやばいだろ。

今の状態だけでもやばすぎる。

異世界に来て、一番の問題が衝動を抑える方法とか、問題ありすぎ。

俺には『俺しか使えない最強の剣』とか、異世界転生ボーナスとかないのかよ。

せめて動画再生機能とかほしい。

ゲーム機はネットに繋がっていたんだから、何とか手に入れたいけど、ゲームのコンソール以上の画面に戻れない。

動画や写真のない時代、どうやって衝動を抑えていたんだ？

悶々としていると、胸の前にARコントローラーが見えた。

1日に1時間くらいだけ使えるコントローラーがお出ましだ。

今日の目的はこのコンソールから相手のステータスを見ることだ。

魔法でステータスを出すと本人の前に表示されるし、ぼんやりと明るくなるから一発でバレるけど、コンソールからなら俺しか見られないだろう。

とりあえずドラゴンをじっと見る。

四角く囲われたのでコントローラーをエアでプッシュ。

〈ステータス〉

種族：下級竜（メス）

名前：ギ

年齢：３６歳

職業：沼の番人

ジョブ：巫女

〈状態〉

体力：■□□

魔力：■□□

状態：錯乱

おお！ 弱っている、弱っているけど、数値で出ないのか。

俺よりどれくらい強いのかはわからない。

しかも、これ以外はどこを押しても情報が出ない。

わかったことは錯乱して弱っていることくらい。

自分のステータスは細かく出るけど、他のキャラはステータスがせいぜいか。

隣の人影に合わせてみる。

〈ステータス〉

種族：火竜人（メス）特異種

名前：ヴィー

年齢：１５歳

職業：下級竜飼育係

ジョブ：学士

〈状態〉

体力：■■□

魔力：■□□

状態：焦燥

うぉ！

『下級竜飼育係』？

彼女のスキルは、下級竜をなんとかできるってことか？

ジョブの『学士』ってなんだ？

どうやら、このコンソールはこの世界のことを俺に合わせて翻訳して表示しているみたいだから、学士って大学生のこと？ 学ぶ人全般をそう指すのか？ わからないけど俺に合わせているのならそういうことになるけど……。

ついでに、俺のステータスを見るけど、特に変わりはない。

アイテムボックスから炎の魔石のかけらを出してみる。

昨日は野球ボールサイズだったけど、今日はビリヤードの玉サイズになっている。だいぶ減っている気がする。

これがないとステータスすら見られないみたいだ。

値段は聞いてないけど、魔石は高そうだったからな。

金貨も出して確認するとちゃんと出てくる。

これらは大切だから戻しておこう。

ガッ。

強烈に頭が締め付けられる。

頭が上に引っ張られる。

強引に振り向かされた。

頭に枝みたいな角が生えた女の子が立っていた。

さっき、コンソールで見ていた子が目の前にいる。

「やぁ……ヴィー」

さっきまで対岸に居たのに、いつの間に。

「○○○○○○○○○○!!!!!」

「○○○○○○○○○○!!!、○○○○○○○○○○!!」

何を言っているのか全くわからない。

この町の人と違って早口で話す感じだ。

頭を掴まれたまま、引きずられるように街に向かっていく。

町の人が俺たちを避けて逃げるように立ち去っていくけど、ヴィーはどんどん町の中に入っていく。

中央通りをどんどん進んでいく。

鈴木商店の前で、俺は「ヴィー」と呼びながらヴィーの肩を叩いて鈴木商店を手で指し示す。

ヴィーは俺の頭を掴んだまま鈴木商店に入っていく。

「バントーサーン！」俺が叫ぶと、番頭さんがすぐに駆け寄ってくる。

「○○○○○○○○○○!　、○○○○○○○○○○!」

ヴィーが何かを訴えかける。

番頭さんも何か言っているけど、怖がって立ち去った。

俺は仕方ないので、通訳を求めて絹江おばあさんに会った昨日の店前に行ってみる。

今日も着物姿で凛とした絹江おばあさんは椅子に座っていた。

ヴィーがおばあさんに何かを訴えかける。

「○○○○○○○○○○!　、○○○○○○○○○○!」

バシーンと絹江おばあさんがパイプを鉢に叩きつけると「お黙りなさい！」と叫ぶ。

ヴィーが黙る。

日本語じゃないし、わからないはずなのに、絹江おばあさんの勢いに押されたみたいだ。

「トキ、あなた何をしているのかわかっているの？」と絹江おばあさん。

俺を殺しそうな目で見てくる。本当に俺を殺したいみたいだ。

「わからないけど、この子のステータスを見てやってくれ」と俺。

「ステータス」とおばあさんが言うと、アルファベットみたいな文字でヴィーのステータスが出る。

おばあさんは急にニヤリとすると俺に聞いてきた。

「面白い子を見つけてきたね、あなたどうするつもりだい？」と絹江おばあさん。

「どうするかは、決まってないけど、なんとかするつもりだ」俺は言葉を濁した。

「トキ、この世界はね、みんな獣人なの。人間なんていない。先代とあなただけ。獣人も人間も見た目はあなたと変わらない。元々はみんな獣だったけど進化して獣人になったの。でも、角があるのはダメ。角があるのは基本的に獣なの。見つけ次第、殺してしまうのが今のやり方。ステータスを見ても基本的には角があるのは人と表示されない。でも、この子は『火竜人』って出た。火竜人もこの世界にいるけど、角はないの。つまり、良くても殺されて、悪くても奴隷として死ぬまで動物みたいに扱われるってこと」と絹江おばあさん。

ここは考えどころだ。ヴィーがいればドラゴンをなんとかできるかもしれない。

この世界で角があるのはやばいんだ。

この世界には奴隷制度があるから、万が一の時は所有者に責任を取らせるから、この子を奴隷にするのはありだと、絹江おばあさんは遠回しに言っているんだろう。

だけど、絹江おばあさんは商人だからお金で話さないと無理だろうな。

質問なんて許してもらえなさそうだし。

「おばあさん、金貨2枚貸してくれないか？ 1枚はこの子を奴隷にするお金やドラゴンを倒すための装備に使う。もう1枚はこいつが何かやらかした時のために、おばあさんに預けておく保証金として。そしてドラゴンを倒したらお礼として金貨3枚をおばあさんに渡す、どうかな？」と俺。

「金貨5枚」とおばあさん、お礼のことだろう。

「欲張りすぎだよおばあさん、ドラゴンを倒したら鈴木商店の宣伝になるんだから、お礼なんてなしでも十分だろ。それに今さら、金貨2、3枚増えたところで、おばあさんが喜ぶとは思えない」正直、まだこっちのお金の価値がわからない。

金貨の価値がどれくらいなのかピンとこない。

「わかった、私の負けにしておくよ」とおばあさん。

話が終わったと思ったのか、番頭さんが飛び込んでくる。

絹江おばあさんは、いつも通り厳しい口調だけど、機嫌が良さそうだ。

その分、番頭さんは顔色が悪いけど。

番頭さんが飛び出した後、若い女性がお茶セットを持ってきた。

絹江おばあさんがわざわざお茶を注いでくれて、直接、俺に手渡してきた。

和菓子も差し出してきたので、つまんで食べる。

砂糖菓子だ。

この世界にも砂糖があるんだな、見た目、すごく高そうだけど。

ヴィーにも差し出す。

ヴィーは俺をちらちら見ながら同じように食べて、お茶をすすったところでへたり込み、声もなく泣き出した。

火竜人には砂糖はダメだったのか？

もうARコントローラーが出てこなかったので「ステータス」と言って、ヴィーの状態を確認する。

ヴィーの状態は「感動」だった。

その後は鈴木商店の前にできた人だかりに、絹江おばあさんが大声で演説をして、みんなが拍手喝采していた。

言葉もわからない俺は、ただただ退屈だっただけだった。

大きな杖を持った老人、多分魔法使いが何か大きな水魔法を使って、ヴィーと俺の何かが繋がった。

これでヴィーが俺の奴隷になったみたいだ。

奴隷契約は、ステータスと言わなくても『状態』がわかるくらい繋がりが強い。

ヴィーの感情が背中から伝わってくる。

早くコンソール画面で確認したい。

解散した時に、絹江おばあさんに礼の代わりに一言言う。

「おばあさん、その足、麦ご飯を食べれば治るよ」

この商店の人はやたら米を食べる、多分脚気だ。

脚気も命にかかわる病気だから早く治した方がいい。

ヴィーを連れて納屋に戻るとヴィーはワラの束に頭から突っ込み、そのまま寝息を立てた。

変わった行動をするヴィーだけど、俺の奴隷になったからには仲良くしてもらわないと困る。

俺がこの世界で困ったことにならないように、ヴィーをどううまく教育するか考えないと！

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