新・異世界の最凶ボディーでハーレムを。一番しょぼい冒険【AI修正版】

第1話 大転移門（AI修正済み）

高校1年の夏休みだ。

待ちに待った「ファイナル・ドラゴン・タクティクス 一番しょぼい冒険」がついにプレイできる！

俺は、天才ゲーマー故マサユキ氏の生配信を見てゲーマーを始めたから、このゲームがどんなに変わっていてもクリアしてみせる。

この「ファイナル・ドラゴン・タクティクス 一番しょぼい冒険」は、落ちぶれたRPG会社と、倒産寸前の恋愛ゲーム会社が合併して、それぞれのゲームを混ぜ合わせただけの、発売前からゲーム史に残る問題作だ。

攻略サイトを見ながらプレイしてもどんどんキャラクターが倒れていくというシビアなゲームバランスなのに、美少女キャラクターのクオリティだけはピカイチという、今期一番の『おかしなゲーム』と話題になっている。

主人公の『トキ』は特別な能力はなく、『いつも興奮している』という特徴しかない。

正直、微妙だ。

美少女キャラたちも美女や優等生、変わったお嬢様、問題児と、戦闘ではすごく弱い。

このゲームでは美少女たちを駒のように使って戦闘を進めなければならないから、キャラが弱いのは困る。

強い男性キャラを入れると、主人公の寿命が減るという謎のハーレム設定。

でも、俺は伝説の生配信「マサユキ・レイド」を超えて、この夏で天才ゲーマーの仲間入りを果たす！

ゲームスタート！

ガタガタガタ

ゲームを始めた途端、現実で地震が発生！幸先が悪い。

ドーン

俺は背中から地面に叩きつけられ、全身に水をかぶる。

起き上がると夜の石畳の上に大きな塊があり、その上にうちのマンションの屋上にあったと思われる貯水槽の破片が乗っている。

貯水槽がガラリと落ち、塊が動き出す。

ダンプカーくらいの大きさのそれは、月明かりに照らされ、恐竜のトリケラトプスのように見えた。

恐竜はクルリと向きを変えると、ドスドスと足早に俺の前から去っていった。

「○○○○、○○○○○○○○、○○○○○○○○」

後ろから人の声が聞こえる。

振り向くと、おじさん剣士と美女剣士、他にドワーフを3mに拡大したような大男二人が立っていた。

おじさん剣士は、地面に唾を吐き、振り返って俺の前から去っていく。

残る3人もおじさん剣士についていく。

何だったんだ？ 俺だけが残される。

目を凝らすと、ヨーロッパのような風景。

どの国と言われても困るけど、月明かりに照らされた石畳がそんな雰囲気を醸し出している。

周りを見ても誰もいない。

明かりもない、見回しても半分に割れた貯水槽以外は何も落ちてない。

俺は部屋でゲームをしようとしていたので、短パン半袖、そしてびしょ濡れ、タオルもない。

ただ、ここが異世界だと感じるのは体が異常に興奮していることだ。

すぐにスマホを持ってトイレに駆け込みたい。

もちろんスマホもなければ動画もない。

知らない異世界に落ちてきて、一番不安なのが動画がないこととは。

後ろから「ニンゲン？」と中年のお坊さんのような男に聞かれる。

ここは美少女キャラの出番だろ！と思うけど、今の俺は女性にドキドキしたいから、セーフ。

俺は頷く。

お坊さんはついて来いというように、顎をクイっと上げる。

俺は坊さんの後についていく。

俺の胸から光るゲームのコントローラーが生えているのに気づく。

触れられないけど指が通過するとボタンが光った。

ARのように背景が半分透けている状態でコマンドが開く。

ファイナル・ドラゴン・タクティクスと同じだ。

〈ステータス〉

種族：人間（オス）

名前：トキ・スズキ

年齢：１６－１歳

職業：なし

ジョブ：なし

やっぱり俺がトキか！ 変態確定じゃん。

年齢がマイナス1ってなんだ。

職業がないのは分かるけど、ジョブがないって失礼だな。

〈状態〉

体力：■■■

魔力：なし

状態：興奮

〈能力値〉

知力：５

計算力：２

記憶力：５

想像力：５

語力：１

まるで中学の時の通知表みたいだ。

どの教科が何だったかは思い出したくない。

運動神経：5

筋力：1

魔法適性：－

回復力：1

副教科ではないみたいだ。

筋力1って！ 中学の部活は、そこそこまじめにやってたぞ！

〈装備〉

頭□

右腕□

左腕□

胴□

足□

足首□

〈入力回路〉

□□□□□

入力回路って何？

〈アイテムボックス〉

□□□□□

アイテムボックスは5個みたいだ。

5種類なのか、5個なのかそれが重要だ。

〈総合戦闘力〉

物理攻撃：１

魔法攻撃：なし

物理防御：１

魔法防御：なし

『なし』って…。

そうこうしているうちにお坊さんの家に着いたみたいだ。

ヨーロッパの街並みにお寺とは。

お坊さんが木箱から、一冊の本のようなものと、英単語を覚えるようなリング付き単語帳を三つ取り出した。

本の方を見ると「指南書」と書かれていた。

日本から来られた方へ、私はこの世界で苦労したので、後の人々のために、この書を残します。

まず、月が大きい。

月が昇れば体が軽く、月が沈むと体が重くなる。

この世界は、以前の世界に比べて大きい。

次に、魔法がある。

体内の魔石が魔力を生み出し、それを力として動きます。

獣人は体内に魔石があり、普段から魔法が使えますが、お風呂を水でいっぱいにするくらいの魔法しか使えません。

魔獣は魔石が大きく、大砲並みの攻撃も簡単です。

しかし、人間には魔石がありません。

人間が魔法を使うには、魔石を手に握って使い切るか、獣人と契約を結び、獣人から魔力を吸い取ることによって使用できます。

魔力の使えないものは、この世界では命を落とす可能性があるので注意してください。

そのため炎の魔石を一つ渡しておきます。

三つ目に、身分制度があります。

私は鈴木商店で働いていたところ、この世界に来ることになりました。

商売の才能はありましたが、何度も貴族から店を潰されそうになりました。

商売には気を付けてください。

この町の鈴木商店に「絹江」という人がいれば、その人は日本語が話せます。

四つ目に、この世界の言葉の順番は日本と違います。

分かりやすく札を作っておきました。

言葉を覚えるまで、使ってください。

五つ目に、宝をいくつか隠してあります。

この世界で大きな財産は作れませんでしたが、少しは貯金できました。

それを分散して隠してありますが、大規模なものではありません。

一人で手に入れれば十分な量ですが、軍隊などを使えば赤字になるような規模です。

この辺りでは西の沼、西の川、北の山、そしてこのお寺です。

お寺の大木と門の中間地点の石畳の両端に壺が隠してあるので、探してみてください。

最後に、絹江に書かせた手紙があります。

鈴木商店への紹介状になります。

--------------------------------------------------

未来の絹江へ この手紙を読むときは、先代の同郷の方が来た時です。

良い人か悪い人かは分かりません。

信用しない方がいいです。

ただし、人の情けはかけてあげてください。

----------------------------------------------------

手紙の後半はアルファベットだった。

冊子と手紙を読み終えた。

要約すると、魔法が使えないとやばい。特権階級やばい。お宝が隠してある。鈴木商店へ行けだ。

お坊さんが単語帳をわざわざ手渡してくる。

これで話せということだろう。

『私』『行く』・・・・・・『鈴木商店』がない。

「鈴木商店」と言ってみる。

お坊さんが頷く。

やはり固有名詞はそのまま発音すればいいみたいだ。

お坊さんは小僧を呼び、何か言っているようだけど、「カッ」だか「ハッ」だかドイツ語みたいな発音をしている。

この世界の言葉、話せる気がしない・・・・・・。

更に坊さんが単語帳を示してくる。

鈴木商店に行くまでにしたいことを聞いているんだろう。

『私』『探す』・・・・・・

宝がないから『箱』と示す。

お坊さんが不思議そうな顔をするけど、とりあえず冊子の中のアルファベットのところをお坊さんに読ませる。

分かったような、分からないような顔で俺を見てくるので、俺はお宝を探しに門に向かう。

大木と門との中間地点の石畳に行く。

石畳といっても30cm角に切った石板を敷いた感じだ。

石畳の両側が1cmだけ窪んでいるところを剥がしてみる。

下には油紙に包まれた手のひらサイズの壺があった。

油紙を剥がすと金貨1枚と銀貨5枚があった。

ポケットに入れ、反対側も剥がす。

同じ壺が出てきて、野球ボールくらいの赤いルビーが出てきた。

これが魔石か？

右手に握ったままステータスを開いてみる。

何も変わっていない。

所有ボックスの枠を選択すると右の魔石が消え、所有ボックスに入った。

ステータスを見ると、魔力のパラメーターに■が付き、魔法攻撃：1 魔法防御：1になった。

能力値の魔法適性も1になった。

寺の小僧が門から走ってくる。

お坊さんの前で何か報告している。

小僧は俺の手を取って「鈴木商店」と言って引っ張る。

すごい勢いで引っ張られて、ヨーロッパの街並みに似た風景の中を5分ほど走り、日本風の商店に着いた軒先をくぐる。

そこには着物を着たおばあさんが椅子に座って、パイプを吸っていた。

おばあさんがパイプをカツンと壺に叩くと、怒鳴り声を上げた。

「○○○」

俺にはわからないけど寺の小僧は土下座して震えている。

「あなた、この言葉、わかるかい？」とおばあさんは言い、じろじろと俺を見ている。

俺の価値を見定めているようだ。

「ああ、わかる」と俺は答えると同時にさっき読んだ手紙を渡してみる。

「懐かしいね、この言葉で男の子と話すのは」とおばあさんは目尻にシワを寄せる。

「で、どうするつもりだい」とおばあさんが聞く。

せっかちみたいだ。

「そこに書いてあった、宝を探しに行くつもりだ。確か、西の沼・西の川・北の山だったか？」と俺は答える。

おばあさんは「西の沼はドラゴンのすみか、西の川は大水で流された。北の山は今は草が生い茂る藪だ、冬にならないと進めない、どうする？」

このおばあさん、俺を試しているのか？

「今、こっちの世界に来たばかりで何もわからないけど、とりあえずドラゴンの特徴や北の山のことを調べてみるつもりだ。意外な弱点があるかもしれない」知らないものは知らない。

おばあさんはニヤリと笑い「あなたはドラゴンを倒すためにこの世界に呼ばれたのよ、ドラゴンを倒さなければカッコつかない。この町の人たちじゃ何の役にも立たない。あなたもドラゴンを倒せそうにない、それでもドラゴンを倒すのかい？」

「わからない。おばあさんはすぐにでもドラゴンを倒せと言うけど、俺の国ではドラゴンは冬眠する期間があると言われている。『今すぐ』『必ず倒す』って決めつけるのは、危険な気がする」と俺。

まあ、言い訳だけど。

「頭は悪くないみたいだね。よし、金貨3枚まで無利子で貸してあげるよ。それから、井戸と納屋は使っていいけど、店や蔵には近づくな、盗みは首を切られるか奴隷にされるよ、疑われないように気を付けな」おばあさんはそう言うと俺のステータスを呼び出して何か書き込んでいるみたいだ。

俺もコンソールを出そうとARコントローラーを見るとなくなっている。

何かARコントローラーを呼び出す方法があるのか？ 色々視界を探ってみる。

「何をしてるんだい、気持ち悪い子だね、神様との対話は同じ時刻に少しの時間だけって先代が言っていたよ」とおばあさん。

つまり、色々できるのは夕方だけってことか。

逆に言えば、この世界の人たちにできることは俺にもできるのか？

「ステータス」と言ってみる。

俺のステータスが出る。

〈ステータス〉

種族：人間（オス）

名前：トキ・スズキ

年齢：１６－１歳

職業：鈴木商店の見習い

ジョブ：なし

〈状態〉

体力：■■■

魔力：□□□

状態：興奮

ここまでしか出ないか。

職業が『鈴木商店の見習い』になっている。

俺はここで働かないといけないのか？

「あなたはスズキって名前なんだね、まあ、この町なら少しは役に立つかもね。今日はもう遅い、明日から頑張りな」とおばあさんは言うと、人を呼んだ。

おばあさんが土下座している小僧に声をかけると、小僧は飛ぶように走り去った。

すぐに男がやってきて、何かおばあさんと話した。

おばあさんが俺のステータスを出して男に見せると男は少し驚いたようで「バントー」と名乗った。

多分『番頭』って言ったんだろう。

番頭に促され、納屋に行く。

納屋には使い古された農具と人力車、ワラがたくさんあった。

本当に納屋だ。

番頭は俺の背中を押して、俺を納屋に入れるとすぐに出て行った。

代わりにアイドルみたいに可愛い女性がお盆に温かい食べ物を乗せて持ってきた。

後ろの地味で幼い女性はお湯の入った桶とタオル、甚平のような着物と草鞋を置いて扉を閉めた。

真っ暗なので「ステータス」と自分のステータスを出すと少し明るくなるので、椀の中のおかゆをすすり、体をお湯で拭き、甚平に着替えて、布にくるまり、ワラの束の上で横になる。

さて、どうしたら、あの二人の若い女性に仲良くなれるだろうか。

俺は異世界に来た不安よりも、自分が悪いことをしてしまいそうな不安に襲われながら、眠れない夜を過ごすのだった。