第十話 フェンリル、さん…?
ふぅ~…。快適ぃ~……。
買ったばかりの椅子に座り、横目で、自ら捕ってきたという獲物を食べるフェンリルさんをちらりと見る。
う、うをぉ……、すごいな……。結構グロい……。
「?」
あ。こっち見た。首を傾げて…可愛いけど、口の周りに血ぃベッタリじゃん……。
もともとは、僕にあげる~って、とってきた獣らしいけど……。解体とか、出来ないし。怖いし。
今はもぐもぐフェンリルさんが召し上がっています。よくやるよなぁ。柴犬サイズで。じぃ~っと観察していると…
――ガサッ
え、何? 背後から音が。後ろを振り返るとそこには―――
「ワォォォ~ン!」
「わ、わぁぁぁぁぁ…!! で、か…!」
僕の方くらいまである大きさのオオカミ…いや、フェンリルがいた。
「えっとー……。こんにちは。フェンリルさん? 君は、この2匹のお母さん…?」
木の下で僕がそう聞くと、2匹の頭をせわしなくなめていた大きなフェンリルさんは、僕の目をを少し警戒するように見つめて、首を横に振った。
う~ん、わんこさん―フェンリルさん3匹もいるとごちゃごちゃになっちゃうから柴犬サイズの2匹のことはそう呼ぶね!―とかなり体格の差があるし、気品あふれる目つきから、そうだと思ったんだけど。
「違うのか。じゃあ、お父さんとかお姉ちゃん? それともお兄ちゃんとか?」
もう一回聞いてみるけど、フェンリルさんは僕の目をじっと見つめたまま首を振るばかり。わんこさんは不思議そうにそれを見あげている。
え。この子達とは知り合いなんだよね。
そう聞こうと思ったけど、聞いてばかりじゃ野暮だ。何かおもてなし……、って、何もないよなぁ……。
「わんっ! わん!」
突然鳴いて立ったわんこさん。僕たちをフェンリルさんをどこかへ連れて行きたいよう。
「うん? どこいくの?」
聞いても答えることはなく、わんこはずんずんフェンリルさんをどこかへ連れていく。
「えっとー……。小川……だけど」
「わんっ」
うん。何がしたいか分からない。ふと隣に座ったフェンリルさんを見ると、
「え」
めっちゃキラキラ目を輝かせてるしー!
「ワンッ!ワン!ワン!」
大きなフェンリルさんが必死に何かを訴えてくれてるけど、
「え?! ちょっと待って? 何言ってるか分かんないよぉ~!」
「ワンッ! ワンッ!」
「ごめんねっ。本当に分かんない!!」
《耕様。感じるのです。さすれば何を言ってるか分るでしょう》
「え?」
感じる……? ……全神経を集中して、頭に流れてくるものは、
『ワンッ。ワンッ!ワンッ!ワワッ!』
「…ごめん。感じようとしたって、何言ってるか僕にはわからないよ、ヘレナ」
《でしょうね》
「え」
《嘘ですもの》
「…………。おい」
《てへぺろ》
「『てへぺろ』っても~……!! そういや最近聞かないな」
《そこですか?!》
「あ、いや」
「ワンッワンッ!ワンッ!!」
「おっとそうだった!ど、どうしよ」
テケテケ、ポフッ。
わっ。今度はわんこさん? 2匹とも僕の足にポフッて!! 何だよっ! 可愛すぎるだろっ!!
『こちらはっ、こちらの川はっ、あなた様のものなのですか?!』
「?! 誰!」
思わず問いかける。
『はぁぁぁぁっ! 申し訳ございません! 私ってば名も名乗らずにっ!!』
叫び返された……。
「え。えっと、まず、どこにいる…?」
『えっ? 私はここですよ?あなた様の横。さっきからフェンリルさんと呼ばれていたものです。フェンリルではないですが』
「ほぇ? 君、喋れるの…?」
動物たちと、のんびり異世界暮らし! マー坊 @wu-tang
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