第九話 いざ、キャンプ用品を買いに
「う~ん、かわいいなぁ……」
僕は今、トマトペーストを食べるフェンリルさんを見ながら、トマトを食べている。超~癒される。
ただ、その至福の時間も長くは続かず……
フェンリルさんはペロリととまとを平らげてしまった。
「お~早いねぇ~」
「わんっわんっ! くぅ~ん…」
「えぇ? まだお腹すいてるの?」
「わんっ」
そうかぁ。まぁあの程度のとまとで腹を満たすことはできまい。どうしようか……
頭をひねって考える。
「わんっ!」
「うん? なn――」
スタスタッ スタッ
フェンリルさんは走り去ってしまった……。
「えー…、バイ、バイ……?」
行っちゃった……。残念……。
僕がしゅんとしていると、
《まぁまぁ、耕様、そんなにしょんぼりしないで下さい。
このヘレナが付いてますよっ!》
「!! ヘレナ…! …けど……」
僕は少し考えてこう言った。
「可愛くはないじゃん」
《は……? 私が、かわいくない?》
あ、やばい。怒らせ…
「いやっ!でも、頼りにはなるかなぁ~!!!」
どうだっ!!
《『でも』…。やっぱり可愛くはないんですね。まぁいいのですがね…ははは……》
あぁぁ!! 怒るというより悲しんでる!
「そっ、そうだ!! ヘレナの真ん丸な形、透明感のあるきれいなお肌(?)、透き通ったような機械音声…! 切れのある突っ込み! 美しいっ!」
《私、が、美しい…?》
「う、うん! 美しいっ!」
《嬉しい!》
「喜んでもらえたならッ、僕もうれしいよ!」
「《わぁぁぁぁぁ…!!」》
「《……………」》
《何ですかこの定期的にある『冷静になると恥ずかしい茶番』は……》
「ごめん。僕もわかんない」
――――――――――――――――――――――――――――
「えぇ~っと、キャンプテーブル~…。
わ、これいいな。メッシュテーブル。いくら? うわぁ~六千円……。悩みどころだなぁ~……」
「じゃ、じゃぁ椅子は。このローチェアとか……七千円……たかぁ~…!」
どうする…川瀬耕。今はとりあえずテーブルだけ買うのもありだ……。
それとも……、今までコツコツとためてきたお金をここで放つか……!
「えぇい! 買ってしまえぃ!」
チャリーン。
これでよかった!!これでよかったのだよ…!
はぁ~…。さて、とりあえず次行くか。
―――――――――――――――――――――――――――
ちょっと久しぶりだなぁ~。大学。
「うわぁぉぉああ!! 耕っ! やっと来たな!! カツオはぁ、動いてないと死ぬんだぞぉ!!」
「わ、翔っ! なに!? カツオ⁈ 多分それマグロじゃない? さらにこういう場面は多分うさぎだよっ?」
「!! そっ、それは! どうでもいいだろ⁈」
この間の鮭た面といい、どんだけ魚が好きなんだよ。って、え。どうでもいいの?
「とにかく! 食堂で飯食おうぜ~。そんで、あの話聞かせてくれよっ!」
「あの話ってー……。あ、異世界のこと?」
うんうん!! 翔が、翔が……すんごい好奇のまなざしで首を振っている…!!
――――――――――――――――――――
「おぉっ!? てことは耕お前っ、魔法が使えるのか⁈」
「あ、いや……。ん? 僕、魔法使ってた、のか……。え?! すごくない?!」
「は? え、すごいけど……。お前……、無意識で…?」
「いや、なんて言うか……。あのっ、魔法……。すごぉ……」
「耕~!! 耕っ! どうしたぁ~!!」
「コホン。ごめんごめん。なんていえばいいかなぁ。もともとすごいなとは思ってたけどね。『魔法』という認識はなかったものだから。スキル…みたいな? いや、違うな。だから、えぇ~っとね?」
「……。まぁいいよ耕っ! は~あ、異世界ってすげ~な~」
「ははは~。そうだ、翔は行きたいとは思わないの?」
「……。思わねーな」 「なんで」
「今十分楽しいし」
「え~…。なんかすごいね翔」
今が十分楽しいって、前までの僕だったら、思わんよ。
「ってか普通に怖い」 ぼそりと言った翔。
「え? 何?」 「モンスターとか居そうじゃん」
「え、翔……。めちゃ怖がり~!!」
「怖いもんは怖いよ! それよりなんか、今度とまともってこい!! 耕が育てたやつ!! 食ってみたい!」
「ま、まぁいいけど……」
―――――――――――――――――――――――――――
さて、また異世界へ戻ってきたが……。
「フェンリルさん。また、来たの?」
「ワフッ」
大きめの獣を口にくわえたフェンリルがいた。
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