新生活、始めよう!

第一話 これは…?ここは…?!

「お疲れ様でしたー」「はいお疲れー」

 ふぅ。バイト終わったー。疲れたなぁ……。

 僕の名前は川瀬カワセ コウ、大学一年生だ。特徴? そうだなぁ。身長174cm。勉強は得意な方だがずば抜けているわけではない。う~ん。あと……あ。のろのろと家に向かって動かしている足を見て思いつく。割とマイペースかなぁ。

 って、これは特徴とは言えるのかな……。


 他に何か……、

 動物が好き。とか?いや、別に詳しいわけでもないし。はぁ、平凡だぁ……。

「……なんか、なんか面白いこと起こらないかな~」

            ※フラグ


 コツン。ん? なんだ? 足に当たったそれは、コロコロと歩道を転がり、小石に当たって止まった。野球ボール? 白くて丸いので、そう見えたのだ。しかし違った。手に持ってみたら、野球ボールにしては重く硬いことが分かったのだ。

 何かの機械…? にしたって何の……。


「ワンッ!ワンワン!」

「わっ。ごめんなさい!!」

「いえいえ! こちらこそすみませんうちの子が~……」


 お散歩中のワンチャンに吠えられてしまった……。飼い主さんにも申し訳ない。

 機械のことは少し気になるところではあったが、ここは人目に付かなくもない町中。立ち止まって考えているわけにはいかないし、誰かが落としたものでも困る。おとなしく元あったところに戻して帰ろうとするけど、

 ……やっぱ気になるな。


  家に帰って————

 ドサッ。ベットに倒れこむように寝転がる。ふと横を向くと、バイト帰りに拾った機械(?)が入ったカバンが目に入った。なぜか持ち帰ってきてしまった……。好奇心には勝てまい。どうしようか。……しばらく考えてからむくりと起き上がり、カバンから機械を取り出した。もう一度観察してみると気づいたことがあった。

「あ、ボタンがある」

 丸い形に沿ったフラットな四角いボタンだ。

 ……押してみたい。ものすごく気になる!このボタンは何だ?!ぐぬぬぬぬ

「えぇい!おしてしまえ!」

 カチリ

「さあ!何が起こ———」

   

  ———————————————————————————————— 


 本当に一瞬だった。ボタンを押してから、僕が叫ぶまで


「―—え?!ここどこおぉぉぉぉ!」


 目の前には、深い緑の葉が茂る木々が広がっていた。 のだが……


「怖すぎる! どこここ、マジで怖い、やばい、なんで!」


 ハッ! そういえば手に持っていたアレは…! 急いで確認してみる。確かに手には

 あの機械があった。しかし、んんんんんんんん?なぜか透明になってる~!!

 しかも球体の中心には赤い光!何なんだホントにぃ! しかし、しかしだ、これで原因はこのオーブだということが分かった! そうであればもう一度ボタンを押し現実世界へ戻るのみ!というか戻れることを祈るのみ! さあ!    カチリ


  ————————————————————————————————


 あれから二週間たった。今は大学にいる。あのオーブは怖いのでもう触れてもいない(現実世界へ戻ったらオーブの色も戻ったのが余計怖かったので部屋のすみに札を貼って置いてある)。捨てようとも思ったけど、それで祟ったりしたら余計に怖い。

 あれは夢だったのか? や、そんなはずはない。だけど、あんなこと、現実で起こるはずが…そんな考えを巡らしていたあたまのなかに、突然大きな声が響き渡る。


「おいおいおいおい! シャケた面してんじゃねえよ!」


 今後ろから肩を組んできたこいつは高橋タカハシ カケル。中学からの友達だ。


「ふっ、ふふ。何だよ鮭た面って、しけた面だろ。腹減ってんのか?」


 思わず笑いがこぼれる。


「はぁ!? しゃしゃ、鮭なんて言ってないですー。」


 翔はそう言ってから、またごにょごにょとこうつぶやいた。


「腹は減ってるけど……。はっ! そうだ! 飯食いに食堂いこーぜ!」

「はいよ」


 半分呆れながらも、翔に従うことにした。


 食券番号を呼ばれるのを待つ間、少し、沈黙が流れた。僕は迷った。翔にあのオーブのことを話そうか。信じてくれるか分からない。けど、翔ならきっと、笑って流してくれるし。変人扱いされ遠巻きにされるなんてことはない。.......よしっ!話そう!


「なあ翔、何かなぁ、この間なぁ」

「うぉっ!なになに 怖い話ぃ?」 


 うわぁ、こいつめっちゃ食いつくじゃん。


「いやぁ、まぁな、怖い話っつうかな」


 僕がためらっていると……、


「いいんだよぉ こうくん、話してゴラァん」


 うわっ、なんかウザっ。


「話すのやめようかな…」ボソッ

「ちょぉーい!ごめんなさい!!話してください!!」

「じゃ、じゃあ」


 そう言って僕は翔に話し始めた。

 ——————

 一部始終話し終えて、静かに聞いていた翔は言った。


「うをぉ!なんかいいじゃん!」

「えぇ?そうか?」


 まったく共感できない。怖いだろこんなの……。


「すげぇなぁ!もう一回行ってみろよ異世界!!」

「てか異世界なのかもわかr」

「あ!食券番号156!俺だ!取り行ってくる!」


 翔はそう言って、食券片手に行ってしまった。

 長年仲良くやってきた翔に後押しされると、なぜだろう。勇気が出る。

 …はぁ。行くか~「異世界」。

 ためらいながらも、決意したのであった。

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