ゆびさきに刺青とは珍しい。背中や腕ではなくゆびさき。
指を水に浸す時、刺青の魚が沖へ向かおうとしている。そのさまはひらひらと揺れて見える。「ひらひら」とした金魚のような魚なのだろうか。
刺青の魚がひとりでに沖へ向かって泳ぎ出すイメージは鮮烈だ。のみならず「揺れる」ような現実性への揺さぶりがあり、説得力がある。
ひらがなで書かれた「ゆびさき」と、加えて「刺青」という身体への言及が気になるところだ。
「魚」は「ゆびさき」から泳いでいかなければならない。この妙なリアリティはなんなのだろう。
「白魚のような手」というように指と魚のイメージは案外相性が良いのだろうか。
指というモチーフの持つ身体感覚を活かした名歌である。