第3章 - エイリアンのカジノ

「ふぅ、あのサイボーグ軍団とのバトルは疲れたわ」

 ジョセフィーヌは、ベガバスターの操縦席に深々と座り込む。

「だが、そろそろ燃料が底を尽きそうだ。補給が必要だな」

 カプテン・ブラックが計器を見ながら言う。

「でも、お金がないわよね。あのデータを売ったお金、ほとんど使っちゃったし」

「仕方ない。次の星で一儲けするしかないな」

「一儲け?まさか、私に体を売れとでも?」

「お前なんか買う物好きがいるかよ。俺が言ってるのは、ギャンブルだ」

「ギャンブル?」


 そこに表示されたのは、巨大な宇宙ステーション。無数のネオンが煌めき、豪奢な造りが一目でわかる。

「あれは、エイリアンが経営する超高級カジノ、コズミック・ルーレットだ。銀河中のセレブが集まる一攫千金の場所さ」

「ほぉ、面白そうじゃない。私、ギャンブル大好きなの」ジョセフィーヌの目が輝く。

「だが、相手はプロだ。下手に手を出すと、全財産をスられるぞ」

「あたしを誰だと思ってるの? あたしの運と度胸を舐めないでよね。ベガちゃん、カジノに直行よ!」


 ベガバスターは、コズミック・ルーレットに到着した。ジョセフィーヌとカプテンは、豪華絢爛な内装に目を見張る。

「わぁ、なんて豪華なの!」

 ジョセフィーヌが興奮気味に叫ぶ。

「だが、浮かれすぎるなよ。ここは……」

 その時、黒いスーツを着た背の高いエイリアンが現れた。彼の額には、第三の目がついている。

「いらっしゃいませ、コズミック・ルーレットへ。お二人とも、初めてのご来店ですね」

「そうよ。あんた、どなた?」

 ジョセフィーヌが尋ねる。

「私はこのカジノのオーナー、トライクロプスと申します。お客様に最高のひとときを提供するのが、私の務めです」

「へぇ、三つ目のオーナーってわけね。私はジョセフィーヌ、宇宙一の女海賊よ」

「ジョセフィーヌ……。噂に聞く、無鉄砲なお嬢さんですね。カジノでの勝負、期待しています」

 トライクロプスが不敵に微笑む。

「当然よ。私の運の強さ、とくと見るがいいわ」


 ジョセフィーヌは、ルーレット台に向かった。そこには、多くのエイリアンたちが興奮した面持ちで集まっている。

「そこの嬢ちゃん、勝負するのかい?」

 ディーラーのエイリアンが彼女に話しかける。

「もちろんよ。私、負けを知らないんだから」

「だが、ここのルールは地球とは違う。宇宙ルーレットは、賭け方も結果も複雑だぜ」

「問題ないわ! 私、要領がいいんだから」


ジョセフィーヌはチップを賭けると、胸を張って言った。

「Black hole on 42!」

 ルーレットが回り始め、全員が息を呑む。ボールがポケットに収まると、ディーラーが叫んだ。

「42, black hole! 嬢ちゃん、大当たりだ!」

「やったわ!私の勘は宇宙一なのよ」


 一同が驚きの声を上げる中、ジョセフィーヌは次々と賭けに勝っていく。その度胸と強運に、場内は大興奮だ。

「すごいな、嬢ちゃん。その調子なら、このカジノを丸ごと買えるんじゃないか?」

 しかしディーラーもただ者ではない。

「ふふん、私が本気を出せば、この銀河だって買えちゃうわよ」

「それは言い過ぎだろ。この銀河はお前さんの手に余る」

「余らないわよ。だって私、この宇宙で一番運がいいんだから」

「運だけじゃ生きていけないぜ。時には知恵も必要だ」

「あら、頭脳も私の取り柄なのよ。見くびらないでちょうだい」

「ならば、次の勝負はメンタルバトルというわけか?」

「いいわよ。かかってきなさい!」


 こうして、ジョセフィーヌとディーラーの間で、白熱した心理戦が繰り広げられる。

「Supernova on 88!」

「88, wormhole! 残念だったな」

「くっ……。次は負けないわよ」

「ほう、前の強気はどこへ行った?」

「黙りなさい。Pulsar on 13!」

「13, pulsar! 君の運、本物みたいだな」

「当然よ。三つ目のオーナーも警戒してるくらいなんだから」


 その時、カジノ中に非常ベルが鳴り響いた。

「非常事態発生!宇宙マフィアによる襲撃です!」

「なんだって?!」

 ジョセフィーヌが叫ぶ。

「君をつけ狙っていたらしい。勝ちすぎたのが災いしたようだな」

 ディーラーが苦笑する。

「私のせいで、みんなが危ない!」

「落ち着け、嬢ちゃん。非常口から脱出するんだ」


 だが、非常口は宇宙マフィアに封鎖されていた。

「どうする、ジョセフィーヌ。俺たちだけでは、奴らには敵わない」カプテンが言う。

「でも、逃げるわけにはいかないわ。だって、私のせいでお客さんたちが人質になってるんだもの」

「だが、無茶はするな。宇宙マフィアは手強いぞ」

「私には考えがあるの。ディーラーさん、あなたを信じてもいいのね?」

「ああ、任せておけ。客の安全は、ディーラーにとって何より大事だ」


 ジョセフィーヌは、人質になっている客たちの元へ向かう。

「みなさん、ご心配なく。海賊のジョセフィーヌがお助けします」

「海賊?あんたが人助けだって?」

「信じられないわね。宇宙マフィアと結託してるんじゃないの?」

「ち、違うわよ! 私は正真正銘の義賊よ!」

「義賊って、どういう意味だ?」

 説明に困るジョセフィーヌ。ノリだけ言った台詞はすぐばれるのだ。その時、宇宙マフィアのボスが現れた。

「お嬢ちゃん、おとなしくカネを置いていきな。でないと、人質の命は保証しないぜ」

「断るわ。だって、このお金は私の運で勝ち取ったものなんだもの」

「お客様の安全より、金が大事なのかい?」

「そ、そういう意味じゃないの!でも……」

「なら、勝負だ。俺とルーレットで勝負しな。勝てば金は全部やる。負ければ命を貰うぜ」

「上等じゃない。私は逃げも隠れもしないわ」


 ジョセフィーヌとボスの間で、命を賭けたルーレット対決が始まった。

「Neutron star on 56!」

「56, red giant! ボス、勝利です!」

「くっ、次で取り返すわ。White dwarf on 99!」

「99, black hole! ジョセフィーヌ、大勝利!」


 あっという間に形勢が逆転し、ボスが追い詰められる。

「ぐぬぬ、こんなガキに負けるとは……」

「ガキじゃないわよ。私は宇宙一の運を持つ、海賊ジョセフィーヌよ!」

「くそ、覚えてろ!次は負けないからな!」


 こうして、ジョセフィーヌの機転により、事件は解決した。

「ジョセフィーヌさん、本当にありがとう!あなたは正真正銘の義賊だったのね」

「お礼なんていいの。困ってる人を助けるのが、海賊の仁義ってもんよ」

「だが、結局カネは全部マフィアに取られたな」カプテンがぼやく。

「ああ、でも大事なのはカネじゃないわ。みんなの命が助かったことよ」


 その時、オーナーのトライクロプスが現れた。

「ジョセフィーヌさん、あなたの活躍に感謝します。お礼として、賞金を差し上げます」

「本当?! やったわ!」

「ただし、このカジノからは出ていただきます。あなたが強すぎて、商売上がったりですから」

「なんで? 私、出禁になっちゃうの?」


 こうして、伝説の女海賊ジョセフィーヌの、波乱のカジノ編は幕を閉じた。彼女の運とガッツは、宇宙中に轟くのであった。

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