第2章 - サイボーグ軍団との攻防

「ったく、宇宙警察に追われるなんて、まさに踏んだり蹴ったりね」

 ジョセフィーヌがベガバスターの操縦席でぼやく。

「お前が無茶しすぎるからだ」

 後続のカプテン・ブラックが呆れ顔で言う。

「まさか、あの警察署に忍び込んで、署長の記念コインを盗むなんて」

「だって、あの署長、私に下品な目つきで視線送ってきたんだもの。お仕置きよ」

「お前のその幼稚な考えは、いつか俺たちを破滅させるぞ」

「はいはい、わかったわよ。で、次はどこ行くの?」

「ブラックホールを抜けて、次元ジャンプだ。警察を撒くには、それしかない」

「了解。ブラックホールを目指すわよ、ベガちゃん」

 ジョセフィーヌが愛機に語りかける。


 ベガバスターは、巨大なブラックホールに飲み込まれていく。機体が激しく揺れる中、ジョセフィーヌは必死で操縦する。

「ちょっと、こんなに揺れると、せっかくセットした髪型が崩れるじゃない!」

 彼女は文句を言いながらも、見事にブラックホールを抜けた。

「よし、次元ジャンプ成功よ。って、ここはどこ?」

「宇宙地図によると、サイボーグ軍団の支配する星系らしい」

 カプテンが言う。

「サイボーグ? 半分機械の人間のこと?」

「ああ、奴らは機械化した兵士たちだ。残酷で、非情だと言われている」

「うわ、あんまり関わりたくないわね」


 その時、ベガバスターが激しい衝撃に見舞われた。

「な、なに?!」

 ジョセフィーヌが叫ぶ。

「攻撃を受けている! 相手は、サイボーグ軍団の戦闘機だ!」

「ええ?! ただの通過なのに?」

「奴らは、自分たちの縄張りを不法に通過する者は誰でも敵とみなす。容赦はしないぞ」

「くっ、なんて融通の利かない連中なの。でも、私は負けないわよ!」


 ジョセフィーヌは、超高速で戦闘機をかわし、反撃の火を浴びせる。その見事な操縦に、カプテンも感心した。

「ジョゼ、お前、腕が上がったな」

「へっ、私は天才パイロットよ。ただの海賊じゃないの」

「だが、数が多すぎる。このままじゃ……」


 その時、ベガバスターの計器に異変が表示された。

「まずい、燃料が切れそう! このままじゃ、捕まって、ぶさいくなサイボーグにされちゃう!」

 ジョセフィーヌが青ざめる。

「ジョゼ、あれを見ろ。小惑星群だ。奴らを撒くチャンスだぞ」

「わかった。いっちょ、曲芸飛行してやるわ!」


 ジョセフィーヌは、小惑星群の中へとベガバスターを飛び込ませた。岩をかすめ、ぎりぎりの操縦で障害物を避ける。

「うわ、ひでえ!」

 カプテンが顔面蒼白になって叫ぶ。

「大丈夫よ。私を信じてしっかりついてきて!」


 ジョセフィーヌの神業的な操縦により、ベガバスターは無事に小惑星群を抜けた。後を追ってきたサイボーグ軍団の戦闘機は、次々と小惑星に衝突していく。

「やったわ!追ってこれないわね」

 ジョセフィーヌがガッツポーズを取る。

「ったく、お前は無茶しすぎだ。俺の心臓に悪い」

 カプテンがぼやく。

「まあ、無事でよかったじゃない。さ、早くこの星系から出ましょ」


 ところが、目の前に巨大な宇宙船が現れた。

「な、なんだあれは?!」

 ジョセフィーヌの顔から血の気が引く。

「サイボーグ軍団の母船だ。ついに追いつめられたか……」

 母船から、無数の戦闘機が放たれる。ジョセフィーヌたちは大軍に包囲されてしまった。


「そこのクルー、投降しろ。さもなくば、この場で消滅させる」

 冷たい機械音の声が響く。

「く、くそ……」

 ジョセフィーヌは歯ぎしりする。

「ジョゼ、どうする?」

 カプテンが尋ねる。

「決まってるじゃない。私は、あの時のように捕まるつもりはないわ。戦うしかないの!」

「だが、あまりに数が違いすぎる。勝ち目がない」

「そこをなんとか、アイデアガールの私が……」


 その時、別の宇宙船の姿が視界に飛び込んできた。

「あれは……海賊団のマーク?」

「おーい、ジョセフィーヌ!助けが必要そうだな!」

 通信画面に、海賊仲間の顔が映し出される。

「み、みんな!どうしてここに?」

「お前が捕まったって聞いて、助けに来たのさ。海賊団は仲間を見捨てねぇんだよ!」

「……ありがとう、みんな!」

 ジョセフィーヌの目に、涙が浮かぶ。


 海賊団の援軍が加わり、形勢は逆転した。ジョセフィーヌの機転で、サイボーグ将軍の弱点が判明する。

「奴の装甲の継ぎ目が弱点よ。そこを狙うの!」

 一同が弱点を集中砲火で攻撃する。将軍は大ダメージを受け、撤退を余儀なくされた。


「はぁ、危なかった……」

 ジョセフィーヌはため息をつく。

「ジョゼ、いい友人に恵まれたな」

 カプテンが微笑む。

「ええ、私、幸せ者ね。こんなすばらしい仲間たちに囲まれて」

「それにしても、お前の機転と操縦が無ければ、今頃ぶさいくなサイボーグにされていたぞ」

「そうね。私って、やっぱりすごいわ!」

 ジョセフィーヌは鼻高々だ。

「はいはい、ジョゼは天才パイロットにして、アイデアガールだ」


 一行は笑いながら、次なる冒険の舞台へと旅立っていった。サイボーグ軍団を撃退した彼らには、今や宇宙に敵なしである。

 ジョセフィーヌの伝説は、まだ始まったばかりなのだ。

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