第5話 自由の代償
***
息が切れてそのまま止まってしまいそうなまでに全力で走った。
それでも希望への道を進んでいると思うと辛くはない。
空の上はどんなところなのだろうか。
もしそこに行けたらどんなことをしようか。
そんなことを考えると楽しくて仕方がない。「私は幸せになりたい」とようやく勇気を出せたのだ。
「リヴェレ、あの……」
リヴェレに改めて礼が言いたくて彼の名前を呼んだその時だった。
巨人の拍手のような銃声があたりに響いたのだ。
咄嗟にリヴェレがシアルを抱えるように庇う。
「大丈夫か?」
「私は大丈夫、リヴェレは?」
「威嚇するための空砲だ、心配するな」と彼は言ってシアルの背後を黙って睨んだ。つられるようにシアルも振り向くとそこにいた人物に目を見張る。
「お父様……」
父は大勢の兵を従えてシアルたちを囲んでいた。その顔にはなんの感情も浮かんでいなくて不気味としか言いようがない。
「残念だよ、シアル。今すぐにその空人をこちらによこしなさい」
少しの沈黙の後、シアルは勇気を振り絞るようにして「イヤ」と首を振った。そして決して離さないとばかりにリヴェレの袖をつかむ。
「私は、幸せになるの」
「そうか」と父は嘲笑うように言った。
「お前は父よりもその男を選ぶか。ならばお仕置きを与えなければな」
そしてこの世の何よりも冷たい声音が響く。
「その男が、死ねば良いのに」
残酷な父の『願い事』だった。
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