★『碧雲物語』発売記念★ 紅猫老君氏インタビュー

2024年8月9日に富士見L文庫より刊行される『碧雲物語 ~女のおれが霊法界の男子校に入ったら~』。


第6回富士見ノベル大賞で〈佳作〉を受賞した作品です。




本作の発売を記念して、著者の紅猫老君さんにお話をうかがいました。


裏側を知ることで、いっそう作品が楽しめること間違いなしです。


最後には、富士見ノベル大賞の応募を考えている皆さんへのメッセージも!


作家デビューを目ざす方にとっても必見の内容となっておりますので、ぜひ最後までお楽しみください。


書影


イラスト:未早




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――刊行される作品はどんなお話ですか。


 才能がありながら不遇の日々を過ごしてきた「碧凛心へきりんしん」という女の子が、とある運命的な啓示に導かれて、国一番の男子校に入学し、困難や試練を乗り越えながら成長していく中華風恋愛ファンタジーです。


 凛心は学院で入学早々、生徒たちから恐れられる「趙冰悧ちょうひょうり」という冷徹な最上級生と「最悪の出会い」を果たしてしまいます。二人は当初対立しますが、やがてお互いを理解して支え合う仲になっていく、というのが物語のメインストーリーになっています。


 作品の舞台となるのは、「術士しゅうし」と呼ばれる特殊能力を持った人間たちが活躍する架空の世界です。法器と呼ばれる魔法道具や、妖獣などのモンスターも登場し、学園モノですが、ファンタジーらしい冒険感も楽しめます。また、男子校ならではの隠れBL感やわちゃわちゃ感、男装女子ならではのドキドキ感も味わえる作品です。


 凛心と一緒に、泣いて笑って恋をして、青春の切なさや楽しさを、存分に楽しんでいただければ嬉しいです!


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――どんなきっかけで作品を思いつきましたか。


 作品のインスピレーションとなったものはいくつかありますが、一時期中華圏に住んでいたので、中華作品に触れる機会が多かったことが大きいですね。中華ドラマやアニメといえば、後宮などを舞台にした宮廷モノ、三国志などの歴史モノ、武侠モノなど様々なジャンルがありますが、私はその中でも、市井の人たちを主人公にした人間ドラマや、天界・魔界・仙人界などを舞台にしたファンタジーモノが好きだったので、そうした世界をモデルに自分なりの作品を書いてみたいと思ったのがきっかけの一つです。


 また、好きな作品の一つに、「高慢と偏見」という、19世紀の英国貴族社会を舞台に、誤解や偏見ですれ違う身分違いの男女の恋愛物語があったのも要因の一つです。ちょうど執筆当時、いわゆる「Enemy to Lover (敵から恋人へ)」系のファンタジーを読んでいたこともあって、そうした緊張感とか、もどかしさが味わえる作品に興味があったのもきっかけと言えます。あとは、小さい頃から、少年マンガや少年アニメなど男っぽいものが好きだったのも、キャラづくりに影響したような気がしますね。


 そんなふうに、ジャンルや国に関係なく、色んな作品を雑食的に楽しみながら、その作品が気に入ったならなぜ好きか、嫌いならなぜ嫌いかをお手玉のように頭の中で転がしているうちに、散らばってた点が線となって、この作品に繋がっていったように、今振り返ってみると思います。


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――作品内のお気に入りのキャラクターとその理由を教えてください。


 やはり、メインキャラクターである碧凛心と趙冰悧が好きですね。


 凛心は、師兄である焔嵐えんらんに「女らしさのカケラもない」と言われてしまうほど男っぽい女の子で、失敗はするわ、先生には叱られるわ、学院の規則も破っちゃうわという、破天荒なヒロインです(笑) でも、その一方で心の中にはスッと一本筋が通っていて、女の私から見ても清々しいなと思うところがあります。さらに、いじめっ子をやっつけるようなかっこよさがある一方で、心には様々な悩みや葛藤を抱えていて、そんな人間らしい弱さに溢れているところも、彼女の魅力だと思っています。


 一方、相手役の冰悧は、国家の統治を担う五大術家の出自で、学院の生徒の監督を行う「寮監生」の立場にある厳格な人間です。無表情で、言動も厳しく、一見近づき難いところがありながら、幼馴染である瑞鳳の発言に翻弄される可愛さや、凛心を気遣う優しさがあるなど、親しみやすいところも持ち合わせているのが魅力と言えます。


 この二人は、当初お互いを視界に入れるのも嫌なほど対立しますが、やがて様々な試練を乗り越えて、理解し合う仲になっていくのが、書いていて楽しかったです。


人物紹介


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――賞への投稿時、作品を書くにあたってどんなことを大事にしましたか。


 恋愛小説ですが、きちんと物語を通じてキャラクターが成長していくような作品になるよう、心がけました。また、ミステリーのように伏線も随所に折り込んで、読者の方に、「これってどういうこと?」「そうだったのか!」とワクワクしながら読んでいただけるようにも工夫しました。


 さらに、中華ドラマによく登場する「あるある」もコミカルに盛り込んでいるので、ぜひそうしたベタな感じも、楽しんでいただければ嬉しいです(笑)


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――富士見ノベル大賞に応募したきっかけを教えてください。


 ライトノベルの新人賞についてリサーチをしていた時、「大人のためのキャラクター小説」という、富士見L文庫様のレーベルコンセプトに惹かれて興味を持ちました。また、実際に刊行されている作品も自分の作風や好みに合っていたので、「この出版社様に、自分の作品を託したい!」と思って応募しました。今振り返ってみれば、一期一会の運命的な出会いだったなと思っています。


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――応募が完了したときや受賞の連絡を受けたときのお気持ちを教えてください。


 新人賞に応募するのはこれが初めてだったので、応募ボタンを押す時は手が震えました。送信が完了して、ほっと一息ついたあと、読み返した提出原稿に誤植があるのを発見して、「これは完全に落選したな……」と落ち込んだのを覚えています(笑)


 選考結果が届くまでの数ヶ月はドキドキしっぱなしで、毎日メールの受信ボックスを開けるのが怖かったです。なので、受賞の連絡をいただいた時は、本当に信じられない気持ちでいっぱいになり、間違いなんじゃないかと何度もメールを読み返しました。実際に、編集長様とご担当編集者様にミーティングをしていただくまで、ずっと受賞の事実を信じられなかったような気がします。数ある応募作品の中から、拙作を選んでいただいた審査員のみなさまに、心から感謝しております。


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――改稿の過程や編集との打ち合わせの中で印象に残っていることはありますか。


 まず、受賞の際に作品に対する丁寧なフィードバックをいただけたのが印象的でした。提出作品の良いところをしっかりと評価していただいた上で、より良い作品にするためのポイントをいくつも提示していただけたのが嬉しかったです。


 改稿作業では、キャラクターの人数変更やプロット変更など、訂正すべきことが非常に多く、何度も壁にぶつかりました。しかし、その度に担当編集者の方に、親身になってアドバイスをしていただいたり、何度も原稿チェックをしていただいたりして、なんとか先に進むことができました。なかなか執筆がうまくいかず、精神的にも辛い日々が続きましたが、今回の刊行を通して、大きく成長することができたと強く実感しております。何度私が弱音を吐いても、温かく励ましていただき、ご指導していただいた担当編集者の方に、深く感謝申し上げます。


POP


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――これからどんな作品を書いてみたいですか。


 日常のストレスや大変さを忘れて、物語の世界に没頭できるような、そんな作品を描き続けたいと思っています。今は中華風の作品に一番興味がありますが、ミステリーや西洋風ファンタジー、ビジネスものなど、ジャンルを限らずに挑戦していきたいですね。


 特にこだわっているのは、登場人物と一緒に、泣いたり笑ったり、胸をときめかせたりしながら、明日を切り開くエネルギーをもらえる作品を書くことです。たとえ時代が変わっても、フィクションが無くならないのは、物語に人を変える力があるからだと思っています。自分の「好き」をとことん突き詰めつつ、作品を手に取っていただいた方に、心が震える体験を届けられたら嬉しいなと思っています。


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――これから富士見ノベル大賞に応募しようとしている方へのメッセージをお願いいたします。


 自分が心から「面白い!」と思う作品は、必ず誰かの胸に響くはずです。


 私はこの作品を、人間関係で悩んだり、なかなか現状を打破できない自分を元気づけるために書きました。執筆の途中では、自分の未熟さを痛感し、自分には無理だと諦めかけたり、好きだったはずの創作活動が辛くなる日々に苦しみました。しかし、この作品を完成させて、賞に応募するところまで達成できれば、一つ成長した自分になれると自分に言い聞かせていた記憶があります。


 小説を書くというのは、大変な作業です。その過程では、制作に行き詰まってしまったり、モチベーションを失ってしまう時もあるかも知れません。でも、そうした経験の一つ一つが、全て成長の糧となるはずです。


 ぜひ自分の作品に自信を持って、賞に応募してみてください! きっと、想像もしなかった未来があなたを待っているはずです!



気になった方はぜひ書籍を手に取ってみてください!


書籍

イラスト/未早


▼書籍詳細はこちらから▼


https://kimirano.jp/special/news/lbunko202408/




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