第二章 最悪の出会い ー2(2)ー
「王族なんかもこの学院に通ってるのか」
「もちろんですよ。ここは、絢各地の有力術家の子息が集う学院ですよ。
優毅が人差し指を立てながら、したり顔で解説した。
「なんで、趙冰悧は第二王子なんかと仲が
「はぁ〜……。碧学子って、本当に何もご存じないんですねぇ。この学院に入学されるのに、術家同士の関係も勉強されなかったんですか?」
優毅が、心底驚いた顔をした。
「趙先輩と瑞鳳殿下は、
「へー。金持ちは金持ちとつるむってやつか」
凛心は頭の後ろで手を組むと、壇上の寮監生二人を見比べた。品格や
「うわ、嫌味なやつ!」
凛心は、その横顔に思いっきり舌を突き出してやった。
「ほら、新入生たち、着席しなさい! もう式典が始まるわよ!」
壇上から教員の声がかかった。
「わ、いけない! 碧学子、早く席につきましょう!」
優毅に促されて、凛心は小走りに新入生の席についた。
その途端に大きな
「新入生一同、学院長先生に礼〜!」
議事進行役の教員が、よく通る声で号令をかけた。
新入生たちは糸で
学院長と呼ばれた仙人然とした人物は、満足げに何度か頭を縦に振ると、口を開いた。
「生徒諸君、この度は入学おめでとう。花盛りのこの美しい季節に門出を祝う絢国の伝統に則り、本日新たにこの学院の一員となる君たちに心から祝辞を送りたい」
そう言って手を胸の前に差し出して、
「若き諸君の門出を祝し、
そう言って、学院長は袖を振った。ふわり、と霊力が駆け抜けるような不思議な感覚がしたと思ったら、天井の木彫りの絵が動き出し、新入生席のまわりに、幻影のような様々な人影が現れた。
「諸君も重々知っていると思うが、この国は陰の気をふきだす鬼穴を多く擁している。そのため、妖獣妖族、悪鬼悪霊、
人影が動き、やがて美しい衣をまとった術士たちの姿に変わっていく。
「しかし、時が
学院長が手を振ると、風に吹き消されるように獣や怪物たちの姿が消え、先ほどまで共に脅威に立ち向かっていた幻影たちが、今度はお互いに斬り合いを始めた。そして、その数は増え続け、やがて武器を手に隊伍を成した術士たちが進軍していく様子に変わる。
「君たちは、もはや絢統一戦争のことなど歴史上の出来事のように思っているだろうが、百を超えるこの私にとっては、まだ記憶に新しい。そして、その
学院長はそう言って、絢統一戦争の様子を語り始めた。その熱弁は、やがて
なかなか終わりそうのない講演に、最初は真面目に聞いていた凛心も、さすがに二刻を超えたあたりから気もそぞろになり始め、胡床の上で何度も座り直して必死に動き出したい衝動を堪えた。周囲に座る他の新入生たちも同じ気持ちのようで、あちらこちらから、ヒソヒソと私語が聞こえてくる。
「おい、聞いたか。また北方で戦が始まったってよ」
とある生徒の声が耳に入った。
「
煌北といえば、確かあの嫌味な趙冰悧の領地のことだ。焔嵐の言っていた戦の話は本当だったのかと、凛心は関心を引かれた。
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