遠く、遠く

Hollow

第1話 遠く、遠く

 つまらない人生を送ってきました。

 社会人3年目の帰り道。日は落ちかけた夕暮れ時に、私は家に続く階段を一人とぼとぼと降りる。さっきまで乗っていた電車の音がけたたましく響いているが、それももう気にならないくらいにはこの生活に慣れ果てた。


 公立の小中高に通い、私立の大学に入り、会社に就職する。


 私の人生は、今のところこの一行で過不足なく表現できるほどに、無味乾燥な人生の道程を進んでいる。周りとちょっと違ったのは中学生の時に母親を亡くしたことだ。

 母は癌になり48歳で亡くなった。私は母の手をつかみながら、呼吸が止まるその瞬間を10年たった今も鮮明に覚えている。


 母は今の私の人生を見てどう思うだろうか。


今、私が仕事と人生がつまらなくて死にたいと思っている知ったら。


「俺、どうしたらいいかわからないよ。」

私は高架下のベンチに座ってそうつぶやいた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遠く、遠く Hollow @hero83

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る