第14話 希望
わたくしの名前は西宮 姫子。自分でいうのもなんですが、この学校一の美少女と呼ばれておりますわ。
告白された回数は数しれず、言い寄ってくる男も数しれず。
しかし、そんなモテにモテまくるわたくしですが人とお付き合いしたことはこれまでに一度も無いのです。
なぜならば好きでもない男性と付き合うなんて事は不誠実極まりないと思うからで、今まで好きになった人もいなかったからです。
(......だがしかし、そう。今までは、です)
この高校に入学しついに、このわたくしにも初めて好きな人ができましたの。その人の名前は新田 賢人くん。一目惚れでしたわ。彼はいままで見てきたどんな男たちよりも魅力的でイケメンで、なによりとてもお優しい方でした。あれほどの男性は他にはいないと断言できます......だからこそ、わたくしはあの方を必ず手に入れてみせる。
(まだ一度も話したことはないけれど。で、でも今日こそは......大丈夫、大丈夫です。わたくしは可愛い。わたくしに話しかけられて嫌がるようか男なんていないんですから)
「お、おはようございます、西宮さん!」
「西宮さん今日も可愛いですね」
「わあ、西宮さんだー」
「ふふ、皆おはようございます」
ほーら、廊下を歩くだけでもこの人気ぶりですのよ。自信をもって、姫子。今日こそ、今日こそは......一言、おはようって。おはようって言うの。がんばれ、姫子!
新田くんのいる教室の扉の前、深呼吸する。ふう、よし。こっちの扉から入れば彼の席を迂回して自分の席につける。その際に、通り過ぎるときにいうの「新田くん、おはようございます」って。できる、できる。やれるわ姫子、行くのです!
――ガラッと扉を開く。
ざわめく教室。
目に飛び込んでくる新田くん。そして、新田くんに顔を寄せている女。
すたすたと歩き自分の席へとつく。そして振り返る。
顔を真っ赤にしている新田くんと、彼に顔をよせている謎の女。
まって、なにこれどういう展開だってばよ。ていうか誰ですのあの女......なんで朝っぱらからあんなにいちゃついてるの?糖度やべえから離れろってばさ。
ていうか、待って......あの女の顔。
あたしより、可愛い......!?
――ゾワゾワと悪寒が背中を走る。
あ、あんな女子ウチのクラスにいました!?あれだけ可愛かったらチェックしてるはずなんですけど?全然記憶にないんですけどー!!
てかまってまって、それよりなんであんなに新田くんと親しそうなんです?ま、まさか、彼女.....!?ウソでしょ!?
(何やってるのよ!西宮 姫子!!あんたがうだうだしてるからああやってせっかく好きになれた男を取られるのよ!?この馬鹿ちんがーっ!!)
やば、泣きそう......学校来たばっかなのにもう帰りたいんですけど。
「いやあ、新田ついに彼女できたのかぁ。いいなぁめっちゃ美人の彼女で」
隣の席の男子の会話が耳に入ってくる。くそが!確かに美人だけども!!
「あれ彼女じゃねえんじゃね?」
「え、そうなん?」
え、そうなん?
「だって昨日の部活帰りに新田とそういう話してたけど、彼女はいたことないって言ってたし」
「へえ、じゃああれ彼女じゃねえの?だったらあの子狙っちゃおうかなぁ」
ナイス情報!モブ男子!ですわ!
「でもまあ、いないって言って隠してたってパターンかもしれないけどな」
「あー、まあそれもそうか」
クソモブがッ!!速攻で希望をぶち壊すなってばよ!!
「でも、ちょっと聞いてみるかな。わんちゃん新田が彼氏じゃないかもだし」
!!
(た、確かに.......モブ男子あなたの言う通りかもしれないわ。希望はまだ潰えてない、あれが彼女ではない可能性もまだありましてよ!)
で、あるならば......!
わたくしはモブ男子に礼をいう。
「......諦めちゃダメって事ですわね。ありがとう、ふたりとも」
「「え......?」」
――わたくしは希望を見つけるために立ち上がった。
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