第13話 学校


「おはよう、賢人」


教室に入り席へ座る。隣の席にいる僕の親友、新田 賢人に挨拶をする。


「ああ、おはよう。え......秋人?」


新田 賢人とは中学時代からの付き合いで唯一の親友だ。根暗な僕と違い、賢人はイケメンで女子からの人気が高い。どのくらい高いかというと、高校の入学式に女子の先輩三人に告白されるくらいの人気ぶりだ。まさに絵に描いたようなイケメン。普通に羨ましい。っと、危ね!意識してないとつい股を開いちゃう。


「新田くん秋人おはよー!......って、え?」


机に教科書やら筆箱やらを突っ込んでいると、もう片方の隣の席の生徒が現れた。彼女の名前は佐藤 澪。昨日アイスを食わせてやった佐藤 誠の姉である。

ちなみにこいつも例にもれず賢人の事が好きっぽい。

澪はいつものようにチャームポイントのポニーテールを揺らし席につく。


「え、え......その声、秋人なの......?」


困惑した表情で僕の顔を覗く澪。


「ああ、そうだよ」

「え、待って待って......なんでそんなかっこしてるの?」

「なんでって、そんなの決まってるだろ。平穏な日々を送るため、理由はただそれだけだ」

「いやいや、マジで意味分かんないんだけど!むしろ平穏から遠のいてるまであるでしょ!」

「なに!?どこらへんが!?」

「いや、どこがって......」


何故か視線を合わせてくれない澪。しかし僕にはその言葉の真意を確かめる必要がある。平穏から遠のいてるとはどういう意味だ?まだこれでも女子には見えないってことか?


「......なあ、お前本当に秋人なのか?」


賢人も神妙な表情で僕に問いかける。


「ああ、そうだよ。まさか、賢人も僕が女に見えないのか?」

「いやむしろ見えるから問題なんだけど」


ど、どういう事だ?見えているのが問題だと......?


「秋人、そもそもどうしてそんな格好をしているんだ?」

「どうして......あ、そうか」


中学校の途中で転校してきた賢人は、僕が自分の顔をコンプレックスに思っている事を知らない。それならばこの格好をしている意味も理解できないのは当然か。説明しておくか。

......ただ、他のやつらにこの話は聞かせたくない。澪が声を荒げたせいでクラスの連中がこちらに注目しちまってるんだよな~。


「ちょっと、賢人......」


僕はちょいちょいと手招きする。


「?」


不思議そうな顔でよってきた賢人に耳打ち。小さな声で僕が女装している理由を打ち明ける。


「な、な、ちょっと、秋人......」


背後で澪の慌てた声がしているが、無視。言葉を発する度にピクピクと賢人が体を震わせている。すまんな、男に耳打ちされるのはかなり気持ちが悪いだろうな......けど耐えてくれ。そして恨むならこうせざる得ない状況を作った澪を恨んでくれ、賢人。


だんだんと賢人の耳が赤くなっていく。そりゃ恥ずかしいよな......ホントにすまん。澪を恨んでくれ。


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