♂男の娘のコの男の娘のこのコのこのこの擬態の娘っ☆

第7話 試着

「はいはい、お兄ちゃん。気絶してないでこれ着てみて」

「......――はっ」

意識を取り戻す。妹が服を差し出してきている。白く腕あたりにひらひらがついた洋服と黒い丈の短いスカート。

そ、そうか。僕は確かショッピングモールに来て姉と妹に服を選んでもらってた最中だったっけ。なぜか気絶してたけど、って......え？

「こ、これを試着するのか」

「そーだよ。着てみないとサイズ合うかもわかんないじゃん」

「それは、そうだが......」

たじろぐ僕をみた姉はフンと鼻を鳴らした。

「今更怖気づいたのかい、弟」

「......いや、そうじゃなく」

「？」

確かにこれを着る勇気はかなり必要だし、躊躇いもある。けどそれよりも、僕は別の事を気にしていた。

「試着って、もしダメなら売り場に戻すって事だよな？」

「そりゃそーよ。着ないもの買っても意味ないでしょ」

「そりゃそーなんだけど......いや、でもよ。僕は男だぞ。男が一度着た服なんて他の女性客は気持ち悪くて着たくないだろ、普通」

「......あー、そっかぁ」

「まあ、確かに。同性ならいいとかそういう問題でもないけど。ま、弟のその気遣いは間違ってないわね」

「だろ。だから僕はこれでいい。もしサイズが違ってたとしてもそれはそれでいいよ。一度着たものは買う」

そんで洗ってフリマアプリとかで売る。

「てなわけで着てくるわ」

「はーい！」

――数分後。

「うわーお！めちゃんこ似合ってるじゃん♪」

「......ええ、引くくらい似合ってるわね」

妹は満面の笑みで、姉は引きつったような表情で笑っている。

「どう？見てる感じサイズは合ってると思うけど......キツいとかある？」

「いや、普通にピッタリ合ってると思う。支払いしてくるわ......」

スマホで僕を撮影しまくる姉と妹。さっき釘刺しといたからネットには上げないだろうけど、あんまり気分の良いものではないな。羞恥心が増していくのを感じる。と、そこでふと気がつく。

「すごくお似合いですね、お客様」

「......！？」

レジへ向かおうと振り返るとそこには店員さんが三人立っていた。

（いつの間に！？）

「スタイルもキレイで、もしかしてモデルかなにかされてるんですか？」

店員さんの一人が聞いてくる。

は？モデル......僕が？んなワケねーだろ！ニヤニヤ笑いやがって！これ、もしかしてからかわれてるのか？

「あ、え、っと、その......」

駄目だ！言い返したいけど、言葉が出てこない！

いや、でもそれはそう！学校でも会話できる奴なんて幼馴染と親友の二人くらいしかいない陰気コミュ障の僕が、店員さんと会話などできるはずもなく！！

ていうか妹と姉は！？なぜ助けてくれない！？

「.....あ、ぅ......た、助け......」

振り返ると姉と妹はこちらにスマホを向け撮影していた。ニマニマと気持ちの悪い微笑みを浮かべる二人。それは完全に僕の事を面白がっている悪しき嗤いだった。

イラッ。