第6話 鬼畜
というわけで僕は女性ものの洋服を買いにショッピングモール内にあるショップへと連れてこられた。仕方ないとはいえ、こういうとこ滅多にこないから落ち着かない。
「やっぱワンピースとかかなぁ?」
「いやあんま露出度の高いのはマズイでしょー、こっちのはどうかしら?」
「えー、せっかくだから可愛さを全面に押し出した感じのがいいよ〜」
次々と僕にいろんな洋服をあてがう姉と妹。キャッキャウフフと楽しそうな二人とは対照に僕の気分は最悪だった。だってめっちゃ店員さんとか他の客に見られまくってんだもん。これ、ホントに女に見えてるのか心配なんだけど......あー、はやく選んでほしいなぁ。
「な、なあ、まだか?いい加減居づらくなってきたんだが......」
「そんなこと言ったって洋服選びは大事なことでしょ?お兄ちゃん」
「そりゃそーだが、でも視線が痛いんだよ」
チラチラとあいつもこいつも。針の筵とはこのことだぜぇ。
「いやそれはあんたのせいでしょ、弟」
「は?僕のせい?」
「さっきから一人でそわそわして。その拗ねたようなしかめっ面どうにかならないの?この場でその雰囲気は普通じゃない。だから注目されてるのはあんたのせい。周りからしたら、あんたあきらかに違和感があるのよ」
た、確かに。でもじゃあ。
「それは、つまり......?どうすればいい?どうすれば僕は普通に見られるんだ?」
「普通、女子は一緒に買い物を楽しむものなのよ。洋服となれば尚更ね。だからそんな暗い顔で買い物をしていると浮いてしまうのよ。周りをよく見てみなさい」
「!!」
周囲で買い物をしている人をみてみると確かにどの女性も笑顔を浮かべ心底楽しそうに服を見て回っている。
「あんた、女に擬態したいって言ってたわね」
「あ、ああ」
「ならそういう女子としての立ち振舞もちゃんと練習しなさい。それができなければ周りを欺くだなんて夢のまた夢、すぐにボロがでてまた変に注目されてしまう......その結果、前よりも更にひどくイジられることになるわよ」
「!!」
そ、そうか......確かに。身なりをそれっぽく着飾ったところで、立ち振舞が女子じゃなければすぐにバレてしまう!
一番大事なのは、つまりは心......ってこと!?
「お兄ちゃん、ほらほら!こういう可愛いブラとか似合いそうだよね!」
「......」
「まて、妹!」
「え、どーしたのお姉ちゃん」
「弟はもう失神している」
「あー、やりすぎちゃったかぁ。へへ」
――失神している男にブラジャーをあてがう鬼畜姉妹☆
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