第4話 馬鹿


「いやまて、僕一人で出かけても意味なくないか。姉も来てよ」

「は?え、なんで?」

「練習ともなれば女性としての立ち振舞、それを指導する役が必要だろ。だから姉も一緒に来てよ」

「あー、まあそれもそうか。でもなぁ、お前と並んで歩くのちょっと嫌なんだよなぁ」


僕と並んで歩くのが嫌だと?何故?ついこの間まで普通に並んで買い物とかしてたじゃん。実の姉に急に一緒に歩きたくないとか言われるの普通にショックなんだが?......いや、しかしまてよ。逆に言えばこれは並んで歩くだけで普通に嫌がらせができるって事か。であるならば尚更連れていかないと。


「頼むよ。アイス食べたくない?僕、奢るし食べに行こうよ」

「アイス......お前、私が今ダイエット中だって知ってて言ってるの」

「まあ、そりゃ。だってここ最近ずっと食事の量を減らしてるの見てるし、しきりに体重の話してるからな.....でも無駄じゃん?だって耐えきれずに夜中ポテチとかチョコとか食ってんじゃん。それなのにダイエットとか意味ないよ」

「――がはっ!?なぜ、知って......」


ガクッと手と膝を床につく姉。お?効いてる?なんか事実を言っているだけなのにかなりのダメージが入ってるな。よくわからんけどやったぜ。


「もうアイスの一つや二つ誤差の範囲だろ。ね、いこう?」

「カロリー的には誤差ってレベルじゃねえ......けど行くか。仕方ない、弟の面倒をみるのは姉の役目だしな。これは仕方ないやつ」


なんか適当な理由つけてデブるのを誤魔化そうとしてるな。けどこれ以上言ったらまた拳が飛んできそうだからやめとこ。顔面パンチで鼻折られそう。


「よし、決まりだな。せっかくだし妹も連れてこうか。僕呼んでくる」

「え、妹も連れてくの?」

「一応。さっき漏らさせた詫びも入れたいし」

「いや漏らさせたからこそ一緒になんてこないでしょ」

「大丈夫大丈夫、食いもんで釣れば来るよ」

「んな馬鹿な」


――数分後。


「お兄ちゃん、私ラーメンも食べたい!」

「おー、わかったわかった。なんでも食え」

「んな馬鹿な」


許された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る