第31話
あれから僕1人での戦闘や召喚したスライムたちと連携して戦うことも行ないながら探索を続けていると、獣の森の表層の中でも小規模な広場と呼べる開けた場所にたどり着いた。
「カナタ様、今日はここで一泊します。野営の準備は1人で出来ますか?」
「ミスズ姉さんから教えて貰ったよ。でも何か間違っているところがあったら教えて欲しい。」
「分かりました。」
護衛の騎士たちはそれぞれ野営の準備を始めており、僕も野営の準備を行なっていく。
召喚しているスライムたちに太陽の光を浴びて成長している草の処理をするように指示を出すと、その間にマジックバックから野営の為の道具を取り出した。
ピョンピョンと跳ねることで地面を固めて整地までしてくれたスライムたちにその場所から一旦離れてもらうと、僕はスライムたちにも手伝って貰いながら野営道具を設置する。
ほとんどスライムたちの頑張りが多いところだが、こうして僕は今日の寝床の準備が終わった。
スライムプラントリーフとスライムプラントウッドの2匹を召喚する。そして召喚した2匹には燃えやすい草と枝を生成してもらう。
これで夜になったら行なう焚き火もファイアスライムを召喚すれば良いだけになった。
「森の中だからかな?」
空は若干オレンジ色に変わっているが明るいのにも関わらず、森の中は段々と薄暗くなり始める。
この場所が開けているからこそまだ明るいが、これが森の中だったら薄暗くてモンスターだけでなく足元の警戒も必要だっただろう。
「カナタ様、早めに夕食にしましょう。我々も作りますが、ご自身で作られますか?その場合は手助けもしますが。」
「とりあえず1人でやってみるよ。」
「そうですか。頑張ってください。何か致命的な問題が起こらない限りは何も言いませんから。」
「分かった。」
これも経験だと僕は1人でやってみるつもりだが、足元でピョンピョンとリムが自己主張していた。
「どうしたの?」
『リムもやる!』
リムはどうやらやる気のようだ。ここで断っても良いが、僕自身も初めてなのだし、ここはリムと一緒にやってみよう。それに失敗してもスライムたちが食べてくれるし、スライムプラントに果物でも生成して貰えば夕食分の果物くらい作れるのだから。
今回使う食材は獣の森で倒した獣系モンスターの肉を使った料理だ。ただ焼くだけの物だが調味料はキチンと持って来ているので食べられる物を作れるとは思う。
スライムが解体の際に下処理をしたウサギ系のモンスター肉を2つマジックバックから取り出して僕とリムの前に置いた。
塩と胡椒を頭部の部分がないウサギ系モンスターの肉に満遍なくかけていくが、どうしてもまな板の上に塩胡椒が落ちてしまう。
『マスター、こうやれば良いよ!』
「なるほど塗り込むのか。」
リムは塩胡椒をウサギ肉に塗り込んでいた。その姿を見て僕も真似する。すると、あれほど動かす度に落ちていた塩と胡椒は落ちなくなった。
「これであとは焼くだけだね。リムは自分で火を出して焼くの?」
『うん!マスターはファイアスライムにやって貰うの?』
「そうするつもり。リムは自分の分を完成させてね。」
自分の分はファイアスライムを召喚して焼いていく。火の管理は僕がするよりもファイアスライムが行なう方が良いだろうからと僕は魔力をファイアスライムに渡すだけだ。
「良い匂いがして来た。これ、美味しいのが出来たんじゃないか。」
初めての料理で美味しい物が作れたのなら僕は料理の才能があるかも知れない。途中で広げたウサギ肉をひっくり返して裏面も焼いた。
そして出来上がったのがこれである。両手足を広げている頭部のないウサギの丸焼きが出来上がった。
「リムも出来たんだね。」
『うん!』
出来上がったばかりのウサギの丸焼きを食べてみた。確かに肉汁が滴って美味しいのだが塩を塗り込み過ぎて塩っぱく、少し獣臭いのが問題だったがそれ以外は美味しい物が出来上がっていた。
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