第32話

 夕食後、僕はリムを膝に抱えながら護衛の騎士たちとこれからに付いて話をしていく。


 「それで夜中の見張りをどうするのかに付いてですが、カナタ様には最初の時間の見張りをお願います。夜中や早朝は我々が行ないますので。」


 「分かった。でも、スライムたちは召喚していても良いよね?」


 「もちろん構いません?」


 これでもし何かあってもスライムたちがすぐに気が付いてくれるはずだ。それにスライムは眠るという事をそれほど長くしないので夜中の警戒に打って付けだろう。


 護衛の騎士の1人と一緒に時間まで周囲の警戒を行なうが、この野営地の周りには大量のスライムたちが地面や木々の上など様々なところで隠れ潜んで警戒しているので、ここまで獣系モンスターが気付かれずに接近してくることはない。


 見張りをしている間に僕は護衛の騎士から色んなことを聞きながら過ごしていき、見張りの交代の時間になる。


 「カナタ様、時間ですから交代です。おやすみなさい。」


 「おやすみなさい。」


 見張りを交代した俺は建てたテントの中に入って目を閉じるが、初めての野営と言うこともあって興奮しているのか、そのせいで僕はすぐには眠れない。


 「リム、スリープスライムの力を使って俺を眠らせてくれないか?」


 『いいよ!おやすみ、マスター。』


 「うん、おやすみ。リム。」


 スリープスライムの力を使ったリムに寄って僕はその後すぐに眠りに付くのだった。


 『時間だよ、マスター。起きて!』


 身体をゆすられる振動で目を覚ました。目を覚ましてすぐに感じたのは冷やっとした空気と光だ。


 どうやらリムがテントの入り口を開いたことで、そこから外の空気と太陽の光が差し込んでいたみたい。


 「おはよう、リム。水、お願いしていい?」


 『はい、お水だよ!』


 枕元に置かれたコップをリムに差し出せば、リムはすぐにウォータースライムの力を使ってコップに水を注いでくれた。


 「「「おはようございます、カナタ様。」」」


 「うん、おはよう。」


 「朝食は準備していますので、朝食後は野営地を片付けて帰還します。」


 「分かった。」


 護衛の騎士たちが用意してくれた朝食を食べている間、魔境・獣の森の中層を探索していたスライムたちが続々と帰ってきた。


 帰ってきた中のラージスライムたちの身体の上にたくさんのモンスター素材や獣の森で採取した素材が乗せられている。


 「みんな、お疲れさま。」


 ラージスライムたちから受け取った素材の数々はマジックバックの中に収納していく。


 そして改めてスライムたちを見れば、かなりの数のスライムたちが減っている。ここまで減っていると言うことは中層のモンスターと激しい戦いをしていたのだろう。


 夜中の見張りをしてくれたスライムたちと一緒に労いながら僕はスライムたちを送還する。


 「うっ……召喚し直さないと。」


 送還した際に思ったよりも戻ってきた魔力量が多くて体内魔力の濃度が増してしまう。


 俺は呻くとすぐにスライムたちを召喚すると、すぐに30匹以上のスライム種たちを召喚した。


 召喚したスライムたちに帰り道までの道中のモンスターを少しでも倒して貰うために先に向かわせる。


 そして朝食後すぐにテントなどの野営の準備をした時に出した道具を片付けると、護衛の騎士たちと共に屋敷に帰る為に領都へと向けて出発する。


 道中は既にスライムたちが倒したモンスターとの戦闘の跡があるだけでモンスターとは遭遇しない。


 ただ歩くだけになってしまったが、この場はモンスターたちの巣窟である魔境だからこそ、僕は辺りに向けての警戒を止めずに進んで行った。


 それから領都までの道中に戦闘らしい戦闘は一度もなく、ただ歩くだけになってしまったが、何の問題はなく領都にたどり着いた僕は公爵家の屋敷へと帰還するのだった。

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