第30話
僕は今、2度目の魔境・獣の森の探索中である。それも表層の奥深く。中層に近い位置での探索だ。現れる獣系モンスターの数も増えたり、表層としては強い獣系モンスターも多数いる。
「やっぱり、スライムたちだけで蹂躙出来ちゃうね。」
「カナタ様。スライムを使わずに戦わないといけない時がいつかあるはずです。我々が護衛をしている間に近接戦闘を行ないませんか?」
「そう、だね。次はそうしよう。スライムたちには中層の探索でもして貰うかな。」
50匹近い数で遭遇する獣系モンスターを蹂躙していたスライムたちを、新しく幾つかのスライム種を多数召喚してから獣の森の中層の探索の指示を出した。
100匹以上のスライムたちがプルプルンと身体を震わせてから一斉に獣の森の中層を目指して進んで行く姿を見送ると、僕とリムと護衛の騎士たちは表層の探索に戻った。
「カナタ様、居ましたよ。」
「うん。こっちに誘き寄せてから戦うから、もし何かあったら頼んだよ。」
「ええ、任せてください。」
背負っていた弓を取り出して矢をつがえると僕は熊のモンスターへと矢を放ったが、距離もあり分厚い毛皮を矢は貫いたがそれほどダメージを与えられていない。
「グルゥォオオ!!!!」
ギロリと視線を鋭くした熊のモンスターが攻撃して来た僕を睨み付けると走り出す。その速さはかなり早く四つん這いの低姿勢で矢を射るが命中率は低かった。
鞘から剣を引き抜いた僕は熊のモンスターの前へと突撃する。
「グルォ!!」
熊のモンスターは太い前足を振るい、僕はそれを低姿勢になりながら走り抜けて剣を振るう。
硬い。熊のモンスターの毛皮を抜けて肉にまで届くが、その熊の筋肉は簡単に切り裂けず浅い切り傷しか与えられない。
それでも僕の目でも熊のモンスターの動きを問題なく視認することが出来るので少しずつダメージを与えて行けば、熊のモンスターも弱っていくはずだ。
それにこの熊のモンスターは動物の熊よりも強い程度のモンスター。熊のモンスターの中でも最弱のモンスターだと思う。
これくらい乗り越えられないと冒険者になるなんて夢のまた夢なのだ。そう思いながら僕は回避を優先して熊のモンスターに攻撃を行なっていく。
「はぁはぁはぁ……倒した。」
ドサッと音を立てて熊のモンスターは倒れる。その姿は身体の至るところに斬撃を受けた痕があり、全身から血を大量に流してしまったのが死因だろう。
僕が熊のモンスターを倒し終わるのに30以上の時間が掛かった。それほど熊のモンスターに痛手を負わせる攻撃が出来なかったことでもある。
もしここでリムや他のスライムたちが居れば、熊のモンスターとの戦闘時間は1分くらいで済ませられただろう。
数の暴力や純粋に強い個の力の前では僕がなんとか倒した熊のモンスターなんて雑魚も同然の相手なのだから。
「お疲れさまです、カナタ様。それにしても進化前の個体ですね。このベアは。」
「へっ?そうなの?」
「ええ、私たちの見立てではですが。」
それだから強かったのかと思うが、やはりスライムたちに任せれば簡単に倒せた相手だとは思うと少しだけだが落ち込んでしまう。
『マスターはボクが守るからね!』
「励ましてくれるのか?ありがとう、リム。」
落ち込んでいたことに気が付いたのだろうリムが僕の足にすりすりしながら念話で伝えてくる。
「カナタ様、解体を済まして置きましょう。モンスターが集まって来ますよ。」
「うん。」
僕が倒した熊のモンスター以外にもリムが集まって来ていたモンスターを1匹で倒していたので、そのモンスターを含めて解体をする必要があった。
だが、モンスターの解体を手早く済ませる為にスライムたちを召喚してモンスターの解体を行なっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます