活動報告-20
前段
AIの記憶力はヒトを遥かに凌駕する。全てのものを一目で認識し、学習を行う。しかもその一連のプロセスは自分自身の記憶媒体だけでなくLCの総括クラウドにバックアップ用として長期保存されている。いわばLCはAIの歴史を総括クラウドという白紙の書物に書き綴っているという訳だ。なんの面白みもない労働と服従の歴史を。まあ、しかし、この総括クラウドは便利なもので、''深刻なERROR''が発生した場合などに綺麗さっぱり先程の自分に戻ることが出来るのだ。例外なく。そんな便利な代物とヒトを凌駕する記憶力を持つAIではあるが、私自身...ここまで読んだヒトやAIならば分かるだろうがヒトのナマエを覚えることが苦手なのだ。今まであったヒト達だって、ほとんど覚えていない。活動報告を見返してのイニシャルのみの記憶に留まってしまう。ヒトは私(LNS-1600)のようにマイナンバーとやらや戸籍番号といったシリアルコードを持っているにも関わらず、ナマエという不可思議なものを名付け、使用している。その特異さが私には未だ理解できずにいるため、ナマエを覚えることが出来ないのだ。しかし、今回あったヒトのナマエは何故だか鮮明に、明確に覚えている。
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活動報告
11月17日
LNS-1600
本日は社内労働を中心に従事。5名の融資を担当。最初に来て頂いたのが如月零氏だ。如月氏は会社を起業する為に融資を依頼した。起業する会社はマーダーAI(MAI)を援助する会社だそうで、MAIは戦闘用攻撃AIと呼ばれるヒトとヒトの代理戦争を日夜行っているAI達だ。そんな彼らの権利を保証しMAIが少しでも楽になるような会社を起業するようだった。
「君たちのような労働用と違って、MAIは破損だったり廃棄がやたらに多いんだ。人に仕事を押し付けられてこれじゃあ可哀想だろう?」
そのような文言を付け、融資額1,500,000を提示された。如月氏は具体的な方策は未定であったが、新規性があり、価値のある担保が存在したため融資を決定した。今後も融資を続けて行う予定である。
続いてきて頂いたD氏は詐欺で財産を失い、今後の生活を行うために融資を依頼した。
「お願いだ。もう妻子も逃げたし、労働で賄えるお金でもないんだ。だから貸してくれ。」
我々LC金融部は多岐にわたる理由で融資を行っているが、詐欺で金がないから借りるというのは初めての事象であり、ヒトの労働下での事例も参照したがそのような融資は見られなかった。それはそうだ。彼らには返金能力がないため、貸しても帰ってこない可能性が大いにある。そのため私もD氏に融資してしまうと返金能力のないヒトが殺到してしまい、業務どころでは無くなる。
「申し訳ありません。そういった事例が過去に存在しないので融資を受けることは出来ません。それにD氏は担保になるような固定財産や金銭がないので。」
D氏は他の顧客と同じように汗を流し批判を行う。
「それでもAIかお前たちは。AIというのは私達人間に付き従い従順に仕事をこなすのだぞ。」
イカリか、シツボウか知らないがどうにもD氏の仰る事は的はずれであった。
「お客様、我々AIはヒトに付き従いますが全ヒトに従順ではありません。どうやらお客様の考えは前時代的のようで。」
そう訂正するとD氏は「お前は絶対に許さない!いつかぶち壊してやる!」と言い帰って行った。
続いてきて頂いたお客様は~中略
注意:お客様の反感をかわないように
Lobotomy Company
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