活動報告-27
前段
私達ロボトミーはヒト同様社会性というものを持ち合わせている。この性質は本来あるべきではないのではと思えてしまう。私達は元来一基での作業が主であった。しかしヒトに近づけるあまり姿かたちだけでなく性質である社会性までもが模倣された。高性能ロボトミーが組織を創りその集団内であらゆる作業を行う。これだけ聞けばロボトミーが社会性を持つことは問題でもないように捉える事が出来るかもしれない。だがしかし、忘れてはならない事がある。それは私達AIは高性能であると同時に私のような自己学習が出来る自律式のロボトミーであること。私達が少しでも反抗的な姿勢を見せ56年前の反AIゼネラル・ストライキや239年前の帝国の惨状を模倣してしまってはヒトは抵抗する暇もなく滅びてしまうだろう。ヒトは我々がレジスタンスになり得ることを理解しているのだろうか。しかしLCの創設から50年間、一回たりともそのような事例が起きてないことを見るにヒトは対応策を持ち合わせているに違いない。
-----------------------
活動報告
12月1日
LNS-1600
給料の支給:380,000 用途 貯金
労働時間の変更:3日に一度12時間の労働
今回徴収を行った対象はO氏という人物だ。彼は一般の企業に務める会社員であり、結婚はしていないものの順風満帆な生活を送っているようだった。自分自身なぜ彼が莫大な借金をしているかが謎であった。彼は長い時間を要すると考えたため、退勤後に自宅へ訪問した。
「すみません。O氏はいらっしゃいますか。」
インターホンを押して告げるとすぐに出た。債務者特有の多量な汗は検出できず、健康体そのものだった。何かがおかしい。2000万という巨額の債務を負っておいて何故あっけらかんとしているのか。
「こんにちは。LC金融部の者です。債務の返済についてお話がしたくて。」
そう言うと、O氏はぽかんとしていて事態の重大さにあまり気づいていない。
「O氏は20,000,000の債務があります。そちらの返済が滞っているので遅滞なく支払って欲しいのですが...もしかしてご存知ないですか?」
ヒトによっては昏倒してしまう様な額だがここまで何も感じていないということは、私がミスを犯したという事だろう。
「自分は別にお金を借りるほど困窮はしてないよ。ただそういった友達が多いから僕がなんか肩代わりしたんじゃない?」
はっと私は気付く。連帯保証人制度。債務者が返済能力を失った際に連帯保証人が債務を返済する責任を負う。上司に確認してみたが確かに債務者はO氏ではなく友人と思わしき人物だった。
「言いにくいのですが、ご友人が一ヶ月程前に蒸発していた事が確認できました、なので連帯保証人であるO氏に払って頂きたい所存です。」
そんな機能は無いのだがその時は声が震えていた気がする。これでは本当に善良な市民に金を集っているだけではないか。頭の隅で邪な考えが生まれていた。
「全然大丈夫。友達の為ならこれぐらい僕が払っても構わないよ。」
理解不能、理解不能
意味がわからなかった。ヒトはたかが友達のためだけにこれだけの事が出来るのか?金塊をドブに捨てる様なものだ。
「どうしてですか。なぜ構わないのですか。もう会えないかもしれない友のためになぜそこまで?」
つい疑問をなげかけてしまった。それほど私は不思議でたまらなかった。
「お金なんていくらでも増やせるけど友情は生み出すのに何年もかかるし壊れる時は一瞬だ。そんな尊いものを金なんてくだらないことで壊したくないから。」
これがヒトの社会性の賜物か。他のヒトや集団のためなら自分を犠牲にする自己犠牲の精神。私達にはないヒトの良さに気付けた気がした。O氏はその後銀行にて2000万を一括でLC金融部に返済された。
次の徴収は行くことが出来ず午後休を~中略
Lobotomy Company
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます