チョロい百合〜短編〜

暴走天使アリス

イチャつきたいお年頃

「……うらやまけしからん!」

「どしたの?急に」


私は教室の一角であまーい空気を出して周りの目を気にせずイチャイチャしていやがるカップルを見て愚痴をこぼす。


なんなのだあれは。見せつけてきてるのか?非リアを馬鹿にしてるとしか思えない。


「リア充爆発しろ」

「今日はご機嫌斜めなの?よしよし」


この頭を撫でてくる美少女は私の親友。

紗夜さやだ。私の愚痴に付き合ってくれているから頭を撫でているのは見逃してあげておく。


「大体さ、教室でよ?こんな公共の場でイチャイチャするとかさ!なんか、こう、あれじゃん?……いかがわしいよね!」


「頑張って絞り出してるのバレバレだね」


それは私の語彙力がないから仕方がないのだ。


「恋人いない歴=年齢である私の前でイチャイチャするのがダメだって言うのは暗黙の了解じゃないの!?こんなの許せるわけなくない?羨ましいじゃん!この上なく!」


「僻みすぎだって……あのカップルだって見せつけてるわけじゃないと思うけど?」


「いーや!絶対に私に対するマウントだね。見てよあの女子。男の前だからって顔緩みすぎでしょ。如何にもメスって感じじゃん。男も男だよね。教室でいかがわしい事すんな!」


「いや〜ちょっとハグしてるだけじゃん?」


それがダメなのだ。くそぅ……私もイチャイチャしたい…まじで、切実に。


「あぁ〜あんな風に甘い空気出してイチャイチャしたいなぁ」


「……へぇ?誰でもいいんだ?そういう安売り、良くないと思うけどなぁ」


若干怒ってる?……流石に誰でもいいは言い過ぎたかな……確かに自分を大事にしてないってことになるもんね。


「ごめんって。でも、私の事本気で好きで大切にしてくれる人なんて早々現れないじゃん?」


そう、なんてったって生まれてこの方告白をされたことがない。下駄箱やロッカーにラブレターが入っていることも無ければ校舎裏や屋上に呼び出しなんてイベントも無い。

……顔は悪くないと思うんだけどなぁ…いやむしろ可愛い部類でしょ


なんて無駄に自己肯定感が上がっていくのを感じていると


「案外近くに琴葉ことはのこと本気で大切にしてくれる人、いるかもよ」


「え〜?またまたぁ」


紗夜がグッと近寄ってくる。


「こんなに可愛くて、人の事を思いやれる優しさがあって、天真爛漫で口が悪い時もあるけど悩んでたりすると親身になって聞いてくれて寄り添ってくれて、素直でちょっと恥ずかしがり屋でさ……一緒にいたら琴葉の内面に惹かれる人は絶対にいるよ。……うん、ムカつくけど絶対いるよね……牽制しとかなきゃ」


え……きゅ、急に何……?めっちゃ恥ずかしいんだけど。てか、顔近…

……やっぱ可愛いなぁ紗夜は。くちびるもプルプルだしお目目ぱっちりで……


というか最後なんて言ったんだろ……


「それにさ、外見だって……こんなにツヤツヤで綺麗な黒髪に、ぱっちりした二重にくりっとした瞳……ふにふにした頬っぺも可愛いし、胸もあってスタイルが良くて…首筋とか色気あってえろすぎだし……一目惚れする人出てきちゃうよ?」


「急にそんな、褒めないでよ……照れる…」


「良いじゃん…可愛いって私が褒めたいんだからさ、素直に聞いときなよ。ほらこっち見て?……うん、赤くなってて可愛い」


この時既に甘い空気を出してイチャイチャしているという自覚が私にはなかった。


教室にいたらさっきのカップルを含めた全員が思っていた。


(((((美少女同士の百合……てぇてぇ)))))


「ほら、ちゃんと自覚して?琴葉は外見も内面も人を惹き付けちゃうくらい、可愛いんだって。ふふ、真っ赤だよ?……かわい」


「も、もう……恥ずかしすぎてしぬ……」


紗夜の目を直視出来ない。目を合わせたらもう逸らせない気がするから。……やばい、ドキドキしてる…なんか、いい匂いするし無性に抱きつきたい……

いつもなら出来るのに……今は絶対無理

どうして……?


「ふふ、可愛すぎ。……さて、ちょっと飲み物買ってこようかなっと。暖かいもの飲みたいし」


「あ……うん。行ってらっしゃい」


……ドキドキしたぁ。なんだったんだろ今の。



あれ?ちょっと待って?……なんか今のって……イチャイチャしてなかった?どことなく甘い空気出してなかった?教室なのに。


え、ちょ……なんで。今までこんなこと無かったのに。

てか、紗夜とイチャイチャしてどうすんだぁぁぁ!確かに求めてたけどさ!


……いや、まあいいか。紗夜は顔が良いし可愛いし、落ち込んだ時にはそばにいてくれて……気も効いて、そばに居ると安心する

体温も暖かくてちょうど良いし……


こう考えると惚れる要素しか無くない?

いやいやいや、ちょっとイチャイチャして口説か……れたのか?まぁとにかくちょっといい雰囲気になっただけでこんなに意識するとか……私ちょろ過ぎでは?乙女ゲームとかで出てくるチョロインなんだけど。


え?意識してなかっただけで実は好きだったとか?でも、紗夜に発情するかって言われたら……いや出来るな。あれ?出来るぞ?今まで意識したこと無かったけど余裕でオカズにして何回でも一人で出来そうな気がしてきた。




いや、何考えてんの私。キモすぎにも程がある。……親友使ってナニしようとしてるんだ……私、最低すぎる。紛うことなき変態じゃん。罪悪感が凄い。

でも、その背徳感も相まって……いや、ダメだって!……もう!なんなの!こんな事考えちゃうなんて、これも全部紗夜せいだし。文句言ってやる


……なんて文句言えばいいの?紗夜のせいでムラムラするって言うの?……無理でしょ


そんな風に考え事をしてると……頬に暖かい…ちょっと熱い物が当たる。


「買ってきた〜これ琴葉の分ね、私の奢り」


「え?……ありがと」


私の好きなココアを買ってきてくれていた。何その優しさ……しゅき


「琴葉、甘いの好きでしょ?」


好みを覚えててくれるの今まではなんとも思ってなかったけど嬉しすぎるんだけど?


「ありがと!紗夜は何買ったの?」


「ホットコーヒー。美味しいよー」


「ぇぇ……コーヒー苦いじゃん。私は苦手だなぁ」


あんなものは飲み物では無い。少なくとも私が好き好んで飲むことは無いだろう。

だけどそれを普通に飲む紗夜はどこか大人っぽく見えてかっこいいなぁなんて思った。


コーヒーを飲んでるだけ。だけどその姿から目を離せなくなって……特に唇に目がいく。

スローモーションみたいに口が小さく開いて唇が缶にあたって……黒い液体が口の中に流し込まれていく。私も缶になったら紗夜の唇が付けられて……


「紗夜ちゃーん?ちょっと生徒会のことで話があるんだけど、いいかな?」


そんな声によって妄想がかき消される。


「はーい!…ごめん、ちょっと生徒会の仕事の話だと思う。待っててね〜」


そう言って飲みかけのコーヒーの缶を置いて教室の外に出ていってしまった。


私の視線は自然とその飲みかけの缶に向く。


いや、間接キスなんて今更……今までも何回もしたことあるし。そんな中学生でも無いのに。なんて言い訳を並べつつも私の手は今の思考とは矛盾した行動をとる。


ゆっくりと近づけて…さっき紗夜が口を付けていた場所に口を付ける…。そのまま苦い液体を流し込む。


……うぅ、苦い。


たったこれだけの行為だけど酷くいかがわしい行動に思えて顔が熱くなる。




こんなの……もう好きじゃん。誤魔化し効かないってば。私って同性愛者だったのかな?それとも、紗夜限定?


「ただいまぁーってあれ?琴葉コーヒー飲めたの?」


「ふぇ!?い、いや?今なら飲めるかなぁ……って思った、だけ、だから」


「そうなの?で?どうだった?」


「苦かった」


そう言うと笑って私からコーヒーを受け取る。そしてそのままコーヒーを口にする。


これで、お互い間接キス……


ドキドキし過ぎてやばい。見つめていると目が合ってニコッと微笑まれる。


キュンっと下腹部が疼く。


いや、なんだよキュンって。ダメでしょ、さすがに。もう無理なんだけど…劣情抱き出し始めちゃったよ。完全にアウトだわ。


「ん?なーに?見惚れてんの?」


「……うん」


「…へぇ?」


そう言って缶を置くと私の手を取って指を絡ませてくる。恋人繋ぎってやつかな?


…何故?でも良いか。この際揶揄われててもいい。紗夜に触れていたい。


そのままグッと身を寄せてくる紗夜。頬に手を添えられて見つめ合う。お互いの吐息がかかるくらい顔が近い。


……私があと少しでも前に出ればキスできる距離だ。まあ、そんな勇気は無いけど


「……これは我慢出来ないわ。ごめん、嫌だったら抵抗してね」


「え?」


繋がれた右手に力が入りギュッと握られる。

これって、そういうこと?


そのまま顔が近づき……初めてのキスをした。


ファーストキスは…ほろ苦いコーヒーの味だった。



「これは……両思いってことで良いの?」


私はおそるおそるそう問いかける


「多分ね。まあ、いつからなのかは知らないけど多分私の方が片思い歴は長いよ」


そう言って笑う紗夜の顔から目を逸らすことができなかった。


「私も……我慢できないかも」


今日……絶対家に連れ込む


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ここまで読んで頂きありがとうございました!このお話はこれにて完結となります!

中途半端ですみません……ご要望が有れば続きを書くのもやぶさかでないですが……まあ、過激にならないように書かなければいけませんね。


では、まあ違う所でお会いできたら良いですね。それでは〜!

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