第75話闇の組織side
「クククッ」
「ボス、面白いですね」
「ああ、そうだな」
ボスと呼ばれるその男は金や宝石を眺めながら部下と思われる男たちと話をしている。
「これからどうしますか? すぐにヴェーラを脱獄させますか?」
「まあ待て。アメリア・ハイゼン家に知らせてこい。あそこもヴェーラを恨んでいるだろう」
「そうですね。まず手紙を出して伺いますか」
「ゼロ、失敗するなよ?」
「もちろんです」
ゼロと呼ばれる男はハイゼン家に手紙を出したようだ。
上位貴族になればどこの家も領地を経営していく上で後ろ暗い部分の一つや二つある。こうした闇組織からの誘いは沢山あるものだ。今回ヴェーラの脱獄に関わった家はヴェネジクト家とブレンスト子爵家。
あとの家も関わるのなら報酬もその分デカくなる。
ヴェネジクト家は娘の幸せを願い、ブレンスト子爵家は不幸を願う。
面白いことになりそうだな。
やはりハイゼン家からは連絡があった。あちらも思う所があったのだろう。
「クククッ」
「ボス、口に出ていますよ」
「面白いじゃないか。まあ、ここでしくじるなよ?」
「もちろんですよ。セブン、小間使いの格好をして付いてこい」
「わかりました」
ゼロとセブンは商人と小間使いの格好をしてハイゼン家へと向かった。
「ロード・ハイゼン伯爵様、本日はお呼びいただきありがとうございます。私の名前はシェイド、後ろの護衛はヨドです」
ゼロとセブンは伯爵家の執務室へと呼び出された。部屋には伯爵と執事、護衛の三人のみ。
セブンは気づかれないよう周囲を見回し、確認した後、ゼロの後ろに立った。
「私どものご提案、どうでしたでしょうか?」
「ヴェーラ・ヴェネジクトの脱獄と私刑だったな。本当にするのか?」
「当方、信用第一でやっております。成功した暁にはそれ相応の報酬を」
「ふむ。失敗したら? 我が家に影響が出るのか?」
「失敗した場合はこちらの不手際ですので報酬はいただきませんし、名前を出すこともないので影響はございません」
「……ふむ。どうしたものか」
あと一歩の所で伯爵は二の足を踏んでいる様子。ゼロは微笑みゆっくりと話をする。
「伯爵、ご夫人の体調はいかがですか? 大切な娘が魔獣になって死ぬとは辛かったでしょうな。
夫人がアメリア嬢を溺愛していたのは有名ですから。魔獣にさせたヴェーラが少しでも苦しめば夫人も楽になるのではないでしょうか?
私共も無理にとは言いません。ヴェーラに罰を与える最後のチャンスを逃す前に勧めただけですから」
「……報酬はいくらだ?」
「成功報酬は二千ギルでどうでしょうか」
安くもなく、手が出ないほどの高額でもない。そこがボスの言うポイントだ。
伯爵は今後の影響のことを考えているのだろう。
「分かった。ヴェーラの脱獄を手引きしてくれ」
「ありがとうございます。ではそのようにこちらも動きます。脱獄に成功した場合、追って連絡を差し上げます」
「分かった。ああ、そうだ。レイン家も誘って良いだろうか?」
「もちろん構いませんよ。ただ、このことを公にされるとこちらも動けなくなるので、内密にしていただきたいのですが」
「もちろん分かっている。その辺は心配いらない」
「何かありましたらこの名刺にご連絡を」
「うむ」
こうしてゼロとセブンは会釈をした後、伯爵家を出た。
「レイン家も来るでしょうか?」
セブンが何の気なしに聞いてきた。
「きっと来ないだろうな。コリーンは生きて修道院にいる。思うところはあれど、これ以上関わりたくはないだろう」
「まあ、そうですよね」
伯爵はあの金額で頷いた。馬鹿な奴だ。早速ボスに報告をしなければな。
二人は互いに視線を合わせた後、人混みに消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます