第67話 オズボーン家side
「貴方、ようやく王宮が落ち着いたみたいね。ウエルタ侯爵やブレンスト公爵、ヴェネジクト侯爵が捕まった時、もうこの国は終わったと思ったわ。
今、お茶会の話題は新しい王太子の婚約者が誰になるのか、よ? 各家が名乗りを上げているらしいわ。
ランドルフ殿下が怪我をしていなければユリアの婚約者に最高だったのに……本当に残念よね。
いや、怪我したとしても王子には変わりないのだし、今からでもランドルフ殿下の婚約者にしてもらうのはどうかしら。
それとも彼の側近だったヨランド・ギヌメール伯爵子息なんていいわよね。彼もまだ婚約者がいないようだし」
一人ユリアの婚約者選びに花を咲かせている妻を横目に私と二人の息子達もサロンでお茶を飲んでいる。
「ペリーヌ、よさないか。ランドルフ殿下は療養に入っているんだ。ただでさえ婚約者候補者達が起こした事件。
我が家がしゃしゃり出る幕じゃない。
それに我が家だってユリアが魔法使いとしての実力がなければ、公爵達から全ての罪を擦り付けられていた可能性さえあったんだぞ?
今は動かず沈黙を守るのが一番だ」
あの時、あの場に居た話を家族にはしていない。話さない方がいい。
知ってしまえば夢見がちな妻は王家を責め立てるに決まっているからだ。
そしてここぞとばかりにお茶会で会議の内容を広めてしまう。
王宮が襲撃されて間もない今、あの時の話が漏れるのは王家としてもこちらとしても問題がある。
今は沈黙を貫くしかない。
妻のペリーヌは不満そうな顔をして二の句を継ごうとしていたが、珍しくジョナスがそれを遮るように口を開いた。
「ユリア姉様はいつ我が家に戻ってくるのですか?」
「ジョナス、珍しいな。ユリアの心配とは。ユリアは身の危険が去るまで保護されている。国内の情勢が落ち着くまでは戻ってこないだろう」
「なんだ? 兄貴、ユリア姉様が居なくて悲しくなったの? あんな奴の心配なんて馬鹿々々しい」
弟のアレンが鼻で笑っているが、ジョナスは何か気にしている様子だ。
「そ、そうじゃない! お前も知っているだろう? 姉様が居なくなってホッとしているけど、ユリア姉様のクラスメイトが心配して会いに来てくれているんだ。
治療して貰ったと感謝している人達もいた。
お、俺だってユリア姉様は田舎者の馬鹿だと思っているけど、みんな口を揃えて『姉様の結界で怪我をせずに済んだ、姉様が魔獣を倒したおかげだ』と耳に入る言葉すべてが肯定的なんだ。
クラスメイトの貴族達は皆ユリア姉様を賞賛していた」
ジョナスは最近次期伯爵として自覚しはじめたのか真面目に勉強をしており、教師を我儘でクビにすることもなくなった。
最近は物事をよく考えるようになっている。
いい傾向だ。
ユリアからの一言がジョナスの中の何かを変えたのかもしれない。
「ジョナス、ユリアはこの家を継ぐこともない。戻ってこなくても問題はないが、家の今後のこともある。そのうち呼び戻すつもりだ。お前はユリアのことなど気にせずに勉強を続けろ」
「ですがっ」
「それ以上口を開くことは許さん」
「……はい。父上」
「馬鹿な兄上。どうせユリア姉様が優秀だと言っているのは一部だし、マナーが完璧なのは侍女のおかげ、というだけだろう? ユリア姉様が優秀なのは周りが言っているだけで騙される兄上も馬鹿だよ」
アレンはケタケタと笑いながらユリアを終始馬鹿にしていた。
「……侍女が優秀、か」
ジョナスは呟いた。
―――――――――
お待たせいたしました!
番外編を公開します。
作者の都合上、週一の更新予定になりそうです。。゚(゚´ω`゚)゚。
のんびりとお読みいただければ嬉しいです。
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