第66話
翌日、久々の登校で不安になっていたけれど、リーズやクラスメイトの元気な姿をみてホッとしたわ。
やはりSクラスの人達の中にはあの事件がトラウマになって学院を辞めて嫁いでいった令嬢も数名いたわ。
ヨランド様もマーク様も顔色は悪かった。
学院ではランドルフ殿下とその周辺で起こった事件がタブー視され口を開く生徒は誰もいなかったわ。
静かながらも授業を再開した学院。
しばらくしてから王宮からの発表があった。
事件の大まかな内容が公表されたのだ。
王宮襲撃事件に加担していたのはブロル総長。
裏で糸を引いていたのはブレンスト公爵。ブレンスト公爵が?? と思ったのは様々な思惑が絡んだ結果だったようだ。
もちろんヴェネジクト侯爵も犯人として捕まった。
王宮のお茶会での魔獣事件や舞踏会の令嬢魔獣化事件で犯人が見つからず、未解決だったのはブロル総長が関与していた。
まず、王宮の魔物襲撃事件ではブレンスト公爵家が他国から召し抱えた魔法使いを使い、ブロル総長が魔法使いを王宮に引き入れた。
魔法使いは魔法円を用意し、王宮を襲わせた。
そしてブロル総長の犯人の隠ぺい。
この事件にヴェーラの家であるヴェネジクト侯爵の関与は無かった。
だが、次に舞踏会でアメリア嬢が起こした事件とコリーン嬢が起こした学院の事件にはヴェネジクト家が関与していた。
アメリア嬢が持っていたネックレスもコリーン嬢が着けていた腕輪もヴェネジクト侯爵が用意したものだった。
どちらもヴェネジクト家が抱えていた魔法使いが変身道具を故意に魔獣化するようにした物だった。
アメリア嬢もコリーン嬢も興奮薬を盛られていることに気づき、ヴェーラから貰った解毒する装具を使おうとしたのだろう。
その薬はどこからきたのかというと、ブレンスト公爵家が用意していた。
買収した侍女を使い、興奮薬を服用させたと自白があったらしい。
彼女達が事件を起こした当日、お茶や菓子に混ぜられていたようだ。
ブレンスト公爵家としては興奮薬で理性を低下させ、貴族が集まる場で彼女達に失言させ、失墜させる予定だったのだ。
結果、二家の思惑が偶然重なり、二人とも事件の被害者になってしまった。
最後の事件については…。
ヴェーラは何故暴れたのかというと、彼女にも幻覚作用のある薬が盛られていた。
元々癇癪持ちな上、薬で興奮が抑えられずああなったのだと思う。
あの教室で亡くなったのは護衛とクラーラ嬢だった。
クラーラ嬢はヴェーラに薬を服用させ煽ったに違いない。
ヴェーラは薬で抑制が利かず、止めに入った人達を攻撃し、クラーラ嬢を殺した。
ランドルフ殿下が婚約者を決めない事に焦っていたのはどの家も同じ。
ヴェーラの家、ヴェネジクト侯爵はヴェーラを王妃にするために他の候補者を潰そうと仕組んでいた。
クラーラの家、ブレンスト公爵の考えはクラーラはあくまで道具であり、クラーラを足がかりにして公爵が実効支配をしようと企んでいた。
ブロル総長は侯爵家が傾くほどの借金を抱えており、ブレンスト公爵の言葉に喜んで応えたらしい。
一番初めの王宮お茶会の惨事で殿下や貴族が怪我をしたり、亡くなればその分、公爵家が王家に入りやすくなる。
私が結界を張り、彼らを守りきったせいでブレンスト公爵の思惑が外れ失敗に終わった。
そのため公爵は計画を変更し、クラーラ嬢を王妃にすることにしたようだ。
3人の令嬢達を蹴落とすため各家の侍女達を買収し、薬を服用させるよう指示をしていた。
舞踏会以降、ランドルフ殿下の体調が思わしくなかった。体調不良を理由に王太子を降りるのではないかという話が出ていたようだ。
ランドルフ殿下の話を聞いた公爵は計画を元に戻し、ブロル総長を使い王宮を襲撃した。
クラーラ嬢に命令し、王宮と同時に学院で暴動を起こすように仕向けたようだ。
アメリア嬢もコリーン嬢も被害に遭い、お咎めはなかったが、お互い蹴落とすために色々と画策していたらしい。
……四家ともそこまでしてランドルフ殿下の婚約者になりたかったのね。
私は呆れるしかなかった。
そしてランドルフ殿下は今回の襲撃で怪我をし、王太子になることが不可能だとされた。
代わりに歳の離れた弟のレナード殿下が王太子になるようだ。
レナード殿下はまだ六歳。これから王太子教育が始まる。
「ランドルフ様、ただいま戻りました。これから師匠と狩りに出掛けてきますね。残念ながらジャンニーノ先生はまだ師匠の特殊結界を読み解くのに苦戦中で行けないみたい」
私はこうして毎日朝昼晩と欠かさずにあの部屋へ行き、眠っている子猫のランドルフ様に話しかけてお世話をしている。
彼は目覚める気配はないけれど、私は彼の目覚める日を待っているわ。
【完】
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最後までお読みいただきありがとうございました⭐︎
最後の最後に…気になった方もいるのではないかと思います。夢見の魔法の話。
パロン医師→苦痛に苛まれて死を望む人ほど亡くなりやすくなる。危険だが、ユリアは死を望んでいない。それにユリアには全幅の信頼を置いているエメという侍女がいるため危険はあるが彼女なら大丈夫だろう。
ジョンソン師匠→死亡率が高い。死を望んでいる者ほど死への誘惑も強い。死亡率の高さからほぼ使う者はいない。だが支える者がいたり、強靭な精神の持ち主は復活できる。本来のユリアは強靭な精神を持っていたため復活できたのだろう。
こんな感じです。
あーあの場面を差し込めばよかったな、とか反省点はいくらでも湧いて出てきますがそこはポジティブに捉えます!笑
連載が始まり2週間ちょっと。
その間、読者様方を振り回してモヤモヤの谷に何度突き落としたことか…。
毎回⚪︎ケモンの呪いを発動させる裏技付き!
日を追うごとに閲覧数が増えていき、ビビりまくっていました。
毎回ビビりながら連載しますが、今回もしっかりと完結まで走り切れたのは皆様のおかげです!
本当にありがとうございました⭐︎
→この後の番外編もゆっくりお読みいただければ幸いです。。゚(゚´ω`゚)゚。
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