第62話
「あ、師匠! どこに行っていたんですか」
「んーちょっと所用さ。それよりも僕が出していた課題は終わった?」
「終わりましたっ! でも、ここがよく分からなかったんですよね」
「あーここか。ここはさ、立体にして魔力を通してみれば動きが分かるから理解がしやすくなる」
「!! 凄い! 本当だ」
私はいとも簡単に解いてみせる師匠に感動する。
「さて、課題も終わったし、狩りに出掛けるよ」
「はい!」
師匠と小屋から出た私はすぐに後悔することになった。
……言っていた通りだ。
見たこともない魔獣が闊歩している。
「師匠、あれ本当に倒すのですか?」
「そうだよ。本日の晩御飯だ」
「……食べられるんですね」
私は見たこともない魔獣と対峙し師匠の助けを借りながらなんとか勝った。
「まあ、初めてだし、こんなもんかな」
「……」
そうして午前中は学院に、午後は師匠の元へ向かうのが日常になっている。
もちろんエメやパロン先生に魔法の勉強をしているから当分行けないと話をしてある。
最近は毎日が充実している感じがするのよね。
一年の頃も充実していたけどね。
師匠から色々教えてもらって魔法って面白いものだと知ったわ。
もっと覚えたい、もっと使ってみたい。
今はそう思える。
クラスの方はというと、変わりなくのんびりと過ごしているわ。たまに居眠りだってしちゃう。
リーズのいるSクラスはというと、理由は分からないけれど、ランドルフ殿下はたまにしか登校しないみたい。
婚約者候補の二人もたまにしか学院に来ていないわ。まだ犯人が捕まっていないからっていう話だけどね。
コリーン嬢はというと退学になってしまったの。
もちろん婚約者候補も辞退したとかどうとか。
まぁ、そうよね。
問題を起こしてしまったわけだしね。
今は領地でゆっくりと過ごしているらしい。
取り巻き達も前ほどつるむことが無くなって学院は穏やかになってきているみたい。
Sクラスで唯一平民の女の子リーズはもともと人懐っこいところがあるし、すぐにクラスに溶け込めたらしい。
たまにヨランド様が話し掛けてくると言っていたわ。
マーク様は年下の婚約者が決まり、ぎこちないながらも婚約者を大切にしている姿が見えるのだとか。
ランドルフ殿下に婚約者が出来ないから側近も、婚約者は要らないというのは無くなったのね。
私の方はというと、ジャンニーノ先生から連絡は全くない。
正式に婚約者になったって話は聞かないし、家から何も言ってこないし、このままでいいのかどうなのか。
よく分からないけど、藪蛇になりそうなので放置している。
楽しい毎日。
このまま卒業までいけるといいな。
そう考えていたけれど、それは突然来た。
「ユリア様、助けて!!」
リーズが飛び込むようにクラスへと入ってきた。
「どうしたの??」
「ヴェーラ様が暴れているの!! 護衛騎士が怪我をして、誰も止められなくて、みんなが死んじゃう!」
パニックになっているリーズをよく見るとリーズも血を流している。
「リーズ、動かないで!」
私は急いでリーズに治癒魔法を掛けた。
「ユリア様、ありがとう。興奮して気づいていなかった」
目に涙を溜めながら泣くのを堪えているリーズ。
「誰か、リーズを医務室に連れて行ってちょうだい」
私はすぐにジャンニーノ先生と師匠に伝言魔法を送り、ヴェーラがクラスで暴れて怪我人が出ていることと、今から自分がSクラスへ行き、対処できるかどうか見てみることを伝えた。
……あの女が暴れる?
そんなことが本当にある?
癇癪の激しい女だと思ってはいたけれど、まさか、ね。
私は走り出した。
師匠からすぐに返事が来た。
「今、別の場所で暴動が起きていて対処中なんだ。そっちに応援を向かわせるからなんとか頑張って。敵陣に突っ込む場合は自分に結界を常に張っておくのを忘れないように」
良かった。
応援が来てくれるのね。
私は少し気持ちが楽になった気がする。
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