第57話
……数時間は戦ったかしら。
リザードマンの大半を倒してふぅと息を吐く。するとジョーンが私の隣に降りてきて結界を張った。
「ちょっと休憩しようか。やっぱり僕が思っていた通りだ。ユリアって凄いね。僕、嬉しくなったよ。こんなにリザードマンを倒せるとは思っていなかった」
「パロン先生のおかげです」
「パロン先生?」
「王都にある平民向けの治療院で治療している医師なんです。私はパロン先生の夢見の魔法で成長できたから……」
私が転がっているリザードマンの上に座るとジョーンはどこからか飲み物を出して渡してくれる。
「毒も薬も何にも入っていない。ただの果実水だから大丈夫」
私は念のため解毒、解呪魔法を通してから口に含んだ。
「つ、冷たくて美味しい」
「だろう? で、君は夢見の魔法でどんなものを体験したんだい?」
「ずっと戦いに明け暮れる夢です。最初はスライムから始まって、目覚める前は何万もの魔獣と戦っていました」
「夢は自分が過去の記憶にある物が出てくるはずだけど、君はその魔獣を知っていたんだ?」
「ええ。もちろん本で知っていました」
「なるほど。本で得た知識を元に倒せるのか」
ジョーンはうんうんと一人納得している。
「確かにこれだけの数を倒しても息が上がらない君は凄い。だが魔法はかなり雑だ。君には師匠もいるんだろう? なんでこんなに雑なんだ?」
「師匠、ですか? パロン先生は医者で医術魔法や魔力の通し方しか教わっていないです。それにジャンニーノ先生は魔法を教えてくれていましたが、学院に入るまでの期間でしたから……。魔法の先生はいないです」
「そうか! 君には魔法使いの師匠がいないんだ! じゃぁ、僕がなるよ!」
「え……。要らないですが」
「僕が師匠になるなんて滅多なことじゃないんだよ?」
「会って二度目でリザードマンの群れの中に落とす師匠、ですか? それに私は自分で生きていけるだけの魔法があればそれでいいんですが……」
「魔法が上達して損はないよ。君なら伸びること間違いない!」
押し切られるような勢い。まぁ、確かに強くなって損はないけど……。
でもね、如何せん怪しさ満載なの!
魔法を巧みに使っていながら王宮に勤めた経験もあるのに私と歳が変わらないような顔つき。
どこかで罪を犯しているんじゃないか? とさえ思う。
「ジョーンは何か禁術を使っているのですか?」
「禁術? あぁ、この若さのこと? それともこの間のどこかの令嬢が魔獣化した道具を作ったこと?」
「え!?」
「何で驚いているの? あんなの簡単だよ? ああ、間違った使い方をしたから戻らなかったんだよね。あれを渡した彼女は故意だよね」
「どういうことですか?」
「さ、休憩は終わり。気になるんだったらこれを終わらせてから話を聞こう」
ジョーンはそう言うと立ち上がり、パチンと結界を解いた。否応なく戦闘の再開。
どういうこと?
犯人はこのジョーンという人なの?
疑問に思いながらもリザードマンを討伐していく。
「その魔法じゃすぐ魔力が切れる。ここはこれを使えばいい」
その場でジョーンは詠唱なしの魔法を使い、倒し方を指導してくる。
……悔しいかな、
ジョーンの倒し方は理に適っていて魔力がスムーズに流れていくのを感じる。
魔力が枯渇する頃、ようやく最後の一匹を倒した。
「お疲れ様~。いやーよく頑張ったね。普通の人なら半年は掛かるよ。師匠として鼻が高い」
……疲れた。
流石に休みたいわ。
言葉を返す気力もなく座り込んだ。全身返り血を浴びた私はすごいことになっているに違いない。
魔法で綺麗にしようにも魔力は底を尽いてしまっていてどうにも出来ない。
するとジョーンは私に洗浄魔法を掛けて抱き上げた。
「ジョーン!?」
「ジョーン師匠だよ? あぁ、大丈夫。弟子には優しいんだ」
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