第54話 ジャンニーノside
……まただ。苛立ちを覚える。
「ブロル総長、またですか? 彼女の疑いは晴れましたかね?」
どうやら前回も前々回も彼女がその場にいたため犯人の一人だと思っているようだ。
陛下からもユリア様を調べるように指示されているとはいえ、犯人扱いは違うだろう。
何故重要参考人であるヴェーラ・ヴェネジクトを調べないのか?
馬鹿馬鹿しい。
俺はブロル総長にそれ以上口にする事はなかった。
コリーン嬢の取り調べをして発見したこと。それはアメリア嬢と同じ魔法使いが関わっていることだ。
魔法使いは中々尻尾を出さない。王宮のお茶会で起こった物とはまた違うようだ。
あれはまた別、か。
幸いなことにユリア様がコリーン嬢を強制的に眠らせたおかげで腕輪は起動途中で止まっていた。
巧妙に仕組まれていた魔道具。
アメリア・ハイゼン伯爵令嬢は魔獣に変化して元には戻せなかった。
禁術が仕込まれた魔道具。
使用者の魔力で変化するが道具を作るのは魔法使いだ。魔法使いの痕跡を辿ろうとしても魔獣に変化した後では指輪はただの指輪になっていて魔法使いまで辿り着けなかったが今回は違う。
王宮魔法使い数名で数日かけて魔法使いの特定に全力をあげた結果……元王宮魔法使い筆頭であったジョンソン・リィツィードという男に行きついた。彼が一連の犯人なのか?
彼は今どうしているのか誰も知らない。
元々家族はおらず、自身の魔法使いとしての腕だけで筆頭になった者。禁術を使えても不思議ではない。
そして彼は十年前に王宮魔法使い筆頭を辞めて姿を消した。
同僚だった奴の話では借金があったとか、女関係だったとか。あまり私生活では褒められたものではなかったようだ。
彼を探しだせば主犯も分かるだろう。
それにしてもブロル総長は何を考えているんだ?
ユリア様に罪人に対する尋問に近いことを行っている。そもそも参考程度に話を聞くということだったのだが?
ヴェーラの方に騎士が本当についているのだろうか?
前回の事件からあれだけ時間が経っているのに騎士の方に動きがない。それにユリアに対するあの尋問。
……何かあるのか?
警戒しておくに越したことはないな。
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