第52話
「ヨランド様はいらっしゃいますか!?」
「どうしたんだ? そんなに大声を出して」
「それが……いつものように三人が喧嘩を始めた時、コリーン嬢が興奮しはじめて何か泡を吹きながら腕輪に手を翳そうとして護衛騎士に拘束されています。詳しくは分からないけれど、呼んでくるように言われました」
「知らせてくれてありがとう。すぐに向かう。……ユリア嬢、一緒に来てもらえないだろうか?この場で何かあった時に対処できる学生は君しかいないんだ」
「……はぁ。分かりましたわ。リーズ、先に帰った方がいいわ」
「ユリア様、無理しないで下さいね」
私達は急いでコリーン嬢がいるSクラスに走った。
足元までの長さがあるスカートなのでとても動きにくいわ。走りながらジャンニーノ先生に連絡を飛ばす。
きっと護衛騎士が連絡していると思うけれど、念のために、ね。
「ユリア嬢、大丈夫か?」
「えぇ、問題ありません」
後から付いてくる私に気を遣うように声をかけてきたヨランド様。普通の令嬢は走らないからね。
「大丈夫か!?」
Sクラスに到着してすぐにヨランド様はクラスを確認する。
私も後ろから部屋に入った。
部屋の右端にはSクラスの数名の男子。
左端にはヴェーラ嬢とクラーラ嬢。そして中央にはコリーン嬢を取り押さえている護衛騎士がいる。ランドルフ殿下はこの場にはいないようだ。
よく見るとコリーン嬢は泡を吹きながら唸り声をあげて目は血走っている。
その様子はとてもただ事ではないわ。
私は拘束されているコリーン嬢に近づき、額に手を当て強制的に眠らせた。
治療院で患者に掛ける以外に使ったことはないけれど、なんとか上手くいったわ。
パロン先生の魔法ほどではないのが残念よね。もちろん学生は使えない魔法。
護衛騎士は使えるかもしれないけれど、繊細な魔法にはなるので拘束しながら魔法で眠らせるとなると難しい。
意識を刈り取る方法はあるけれど、相手は侯爵令嬢だし、怪我をさせて問題になっては困るよねきっと。
その後、ようやく学院の教師達がバタバタと走って部屋に入ってきた。
ざわざわと周囲も騒がしくなっている。
そう思い、私が立ち上がって周りを確認しようとしたところ足元に魔法円が浮かび上がり、ジャンニーノ先生と王宮騎士五名が現れた。
五人の騎士は状況をすぐに理解したようで教室内に居る人達のフォローや聞き取りに回ったようだ。
「知らせてくれてありがとう。コリーン・レイン侯爵令嬢だったね。すぐに調べる」
ジャンニーノ先生はその場で腕輪を外そうとするけれど、腕輪に何か仕掛けがあるらしく引き抜けないでいるようだ。
「……不味いな」
渋い顔をしているジャンニーノ先生。
「先生、どうしたのですか?」
「あぁ、この腕輪にちょっと問題があってね。もう一人魔法使いを呼べばいいか……」
ブツブツ呟いていて思考の世界に旅立ってしまっている。
ジャンニーノ先生が居るし、私は必要ないよね……?
「ヨランド様、王宮の方もいらっしゃいますから私はこれで失礼しますわ」
「あぁ、すまない。ありがとう」
ヨランド様に一言声を掛けた後、私は寮に戻った。
コリーン嬢、大丈夫かしら?
ベッドでゴロリと横になりながら先ほどの出来事を思い返していた。私は魔道具のような腕輪かな? という認識でしかない。
やっぱり先生は凄いのね。
そういえばランドルフ殿下はいなかったけれど、大丈夫だったのかな?
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