第16話
翌日、リーズにまたね、と学院寮前で別れてから自室で冒険者用の服に着替え、ローブを被りギルドへと向かった。
勿論頭蓋骨を深く被ったわ。グレアム達と一緒にギルドへは行っていたのでランクはDランクになっている。もちろんエメも。
ちなみにグレアムはBランクなの。かなり強いのだと思う。
Fが初心者講習を受ける最低限のランクね。グレアム達と魔物狩りをしていたのは私の夢が現実で通じるのか試してみたかったのと、お小遣い程度のものでもグレアム達の将来の資金になるようにと思ってやっていたからいざ自分の将来の事を考えながらギルドへ来るのはちょっとドキドキするわ。
今まで一人で狩った事がない分、不安になりながら依頼書を眺める。
まずは簡単な物から始めた方がいいわよね。
そう思い一角兎五羽の討伐にした。
受付の人に何か言われるかと思ったけれど、特に何も言われる事もなくギルドカードを提示して受注できたわ。
結果はというと簡単に一角兎は討伐出来たの。
今日は試しに狩ってみたけれど、魔物引き取りと受注完了でお金を少し貰ったわ。
ギルドカードにお小遣いとしてドキドキしながら入れてみた。
やってみるまでは不安だったけれど、これなら案外いけるかもしれない。
私はウキウキ気分でエメ達に報告しにいったの!
弟達から尊敬の目で見られてちょっと気恥ずかったけれど、やり切った満足感で一杯になった。
エメは宿から出るときは頭蓋骨を外して帰りなさいと叱られてしまう。
まぁ、そうよね。
その代わり宿から寮までは認識阻害の魔法を掛けてから帰る。
なんでギルドで認識阻害を掛けないかというと、パーティを組んだ時に弊害が出てしまうからなの。
一瞬目を離した隙に仲間が分からなくなるのは困る。
そして戦闘の時にうっかり魔法が解けたらお前誰だ? 的な事になりかねないのよね。貴族である事を隠さなければいけないのでやはり仮面が一番無難だと思う。
ギルドで活動している様々な仮面を付けている人達は貴族なのではないかと密かに思っているわ。
午前中は学院、午後はギルド、偶に治療院へのお手伝いをして毎日を過ごす事が続いていた。
「ユリア様、試験どうしよう。今回はとても難しいって聞いたわ」
珍しくリーズが弱音を吐いている。リーズはあれから暫く悩んだ結果、生徒会には入らない事を選択したみたい。
栄誉な事だったけれど、貴族令嬢達からのやっかみがあったからだ。いくら学校が平等を謳っているとはいえ、貴族に睨まれてはどうしようもない。
その辺は私も十分に理解しているわ。
「じゃぁ、試験までの間一緒に図書館で勉強する?」
「本当!? ありがとうっ! 流石我が友!」
そうして試験の期間中は宿や治療院に行けない事を魔法鳥を使って言付けた。
暫くするとエメからもパロン先生からも試験頑張ってねと返事がきたわ。
リーズと図書館で勉強を始める。といっても私はそこまで勉強の必要がないので読書を片手間に復習する。そして時々リーズの質問に答える形になった。
「凄いわ。ユリア様。なんでAクラスなのか不思議だわ。Sクラスにいても可笑しくないじゃない」
「どうかしら。試験で本領を発揮出来ないタイプなのかもしれないわ。頑張っているけれどね」
私はそう言って笑い誤魔化す。
試験まであと二日と差し迫ったこの日。
いつものようにリーズと図書館で勉強していると、後ろから声を掛けられた。
「試験前に二人で勉強ですか。真面目ですね」
「ヨランド様、ごきげんよう」
「ええ。ユリア様に勉強を教えて貰っているんです」
「ユリア嬢に?」
「ええ。ユリア様は凄いんですから」
リーズは私を褒めてくれているけれど、私は内心ヒヤヒヤしている。殿下の側近に目を付けられたくないもの。
「ヨランド様も勉強ですか?」
「いえ、私は生徒会で使う資料を探しに来ただけですよ」
「そうだったんですね。ほらっ、あちらにヨランド様をお探しの方がいますよ?」
私はそれとなく注意を逸らそうとしたけれど失敗したようだ。
「気にしなくても大丈夫ですよ。それよりもリーズさんはどこが分からないのですか?」
私達の中にグイグイと入ってくる感じに二人とも戸惑ってしまう。
ヨランド様は殿下に負けず劣らずとても格好いいのよね。興味がないものには素っ気ない態度なのだが、それがまた令嬢達の心を揺さぶるらしいわ。
令嬢達の嫉妬は怖いのよ?
いくら午後の図書館で人が少ないとはいえ、殿下の側近であるヨランド様と親しくしていると勘違いされたくないのに。
「えっと、ここと、ここの箇所ですが、ユリア様に教えてもらうんで、大丈夫です!」
「ユリア嬢はAクラスですよね。Sクラスの私が教えた方が良いかもしれませんよ?」
リーズはその言葉にうっ、と怯んでしまう。
本当にグイグイくるよね。
「ユリア嬢は分からないところはありますか?」
「いえ、私は今のところございませんわ。気に掛けて頂き有難うございます。……何だか、お邪魔になりそうなので私は帰りますね。リーズ、頑張ってね!」
私はそう言い残して去った。
ごめんねリーズ。
貴女を盾にしてしまったわ。
チラリと振り返るとリーズの助けを求める視線と合ったけれど、ごめんねという表情だけしてさっさとその場を去る。
逃げるが勝ちよ!
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