第15話

 翌日からの数日間は学院で勉強、午後は治療院のお手伝いをしていた。パロン先生は空いた時間で私の事も診てくれたわ。


 夢見の魔法の効果や変わった事をしっかりと聞いて魔力も調べてくれたの。やはり魔力は何倍にも膨れ上がっていてこの魔力量は国の一、二を争う位の量になっているみたい。


 夢で自分なりに使っていた剣術については過去に何処かで見た物を真似るようになっているのかもしれないし、全くの想像で作り上げたのかもしれないのだとか。


 先生は興味が尽きないと話をしていたわ。私は夢見のお陰で心身共に強くなったし、先生には感謝しきれない。




 一週間ほど経った頃、ようやく魔物の討伐が終わったみたい。


 こんなに時間が掛かるものなのね。

 知らなかったわ。


 先生が言うにはリザードマンという爬虫類系の魔物が数十匹の群れで王都近辺に出没していたらしい。数が多いし、一匹が強いので全てを倒すまでに時間がかかったのだとか。


 私ならズバーンと攻撃魔法を使って一人で倒せそうな気がするわ。


 患者の数も落ち着いたので毎日来なくていいようになったのだけれど、治癒魔法の練習も兼ねてパロン医師の治療院には週に一度お手伝いに行く事にしたの。


 先生も手伝ってくれるのは嬉しいと受け入れてくれたわ。少しずつ自分でも出来る事を増やしていかなければ。


 今の私は将来魔法使いになりたいと考えているけれど、冒険者として生活をするのか王宮魔法使いとして働くのかも考えていかなければ、ね。


 貴族である限り私は家族から利用されるのかしら……。


 少し不安になりつつ、今日も登院する。


 そうそう、私にも学院でお友達が出来たの! リーズというお友達。彼女は商家で女では珍しく文官科らしい。


 私は学院が終わった後、食事を中庭で取るようになっていたのだけれど、彼女もそこで食事をしていて自然に仲良くなった感じなの。


 話も合うし、いつも一緒にいるようになった。


 ランドルフ殿下にはあれから会っていないわ。クラスも違うし、彼らは生徒会に入っているから忙しいようであまり会う事もない。


会うとすれば食堂だけれど、私は中庭で取っているので今のところ鉢合わせはしていない。


「ユリア様。クラブに入るの?」


 リーズはいつものようにパンをちぎりながら聞いてきた。


「いいえ。入る予定はないわ。午後は色々と行くところがあって忙しいもの」


 本当は学院内に長時間留まって殿下達との接触の機会を増やさないようにしているのだけれど。


「リーズは部活に入るの?」

「ううん。でも、生徒会に勧誘されているわ。会計をお願いしたいって。どうしようか迷っているのよね」

「生徒会の会計って凄いじゃない。Sクラスを押しのけて凄いわ」


 私は素直に褒める。何百人といる生徒の中で生徒会に入るのは殆どSクラスの人。


 Aクラスは余程の優秀な人しか声は掛からない。それに今年はランドルフ殿下や側近達が生徒会に入っているのだから狭き門なの。


 ランドルフ殿下に近づきたい人は沢山いるからね。


「んーでも、私が文官志望で商家だから会計って安直よね。Sクラスにも優秀な人が沢山いるし、なんで私なんだろう? って思ってね」

「何故かしらね? 嫌なら辞めても問題ないんじゃない?」

「そうね。もう少し考えてから返事をすることにするわ」


 リーズ自身も何故選ばれたのかよくわかっていない様子。


 生徒会に入れるのはとても栄誉な事だけれど、何か裏にあるのなら止めた方がいい。見目麗しいランドルフ殿下や側近達がいるからね。


 そうしてリーズと食事をした後、また明日ね。と別れてパロン医師のいる治療院へと足を運んだ。


「先生、相談に乗って欲しいのですが」


 患者の治療を終えた先生にここぞとばかりに相談してみる。


「何の相談ですか?」

「私、学院を出たら魔法使いとして生きていきたいのです。王宮魔法使いになるべきか、冒険者になるべきか迷っているのです。

 将来が安定しているのは王宮所属だけど、王宮にはランドルフ殿下達がいます。

 絶対に顔を合わせなくてはいけない時もあるからやりたくない。

 冒険者となって各国を渡り歩くのも良いかなとも思うのですが、貴族という身分が邪魔になるのです」


「ふむ。難しい問題ですね。貴族であれば政略結婚もあるでしょう。除籍すれば平民となり、貴族籍を盾に守られていた物が無くなりますからね。

 貴族を捨てる覚悟をするのは大変でしょうし、まず冒険者になりたいのなら空いている日はギルドで活動をしてみるというのはどうですか?

 もちろん姿を変えて、ですが。

 ギルドで活動してみて思っていたものと違ったら辞めればいいだけの話です。学生の間に体験してみるといいのでは?」

「先生! それはいい考えですね。何でも試してみてから、ですね」


 私の目の前がパッと明るくなったような気がする。


 そうよね、学生の間にやってみて違うなって思えば辞めればいいのだし。やってみよう。


 早速今日の帰りにエメの宿に寄ってから帰った。


 宿の食堂には鹿型魔物の頭蓋骨が飾られていたのでそれを貰う事にしたの。


 王都には様々な魔法使いがいるので頭蓋骨を被っていても変ではないと思うのよね。

 グレアムはいいぞ! と嬉しそうに渡してくれた。エメには反対されたけれど、弟も妹もカッコイイと褒めてくれたわ。


 エメの意見は残念ながら押し切られる形となった。

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