手のひら

 ミレージャが発動しようとしていたもの。

 それは、僕のように前もって準備しておいたものをここぞという時に使う設置型の魔法である。

 だが、その魔法に関しては僕がこそこそと破壊してまわっていた。

 ミレージャが何をどうしようとも、ゲームで王都の一角を破壊した大魔法はどうあっても機能しない。

 

「き、貴様……ッ!?まさかっ!」


「ここまできれいに、何もかもが保険でかみ合うわけないでしょ。明らかに結界のサイズ可笑しいでしょ。この結界は一体、何のためのものだよ」


 これまで今回の件について対応できたのはたまたまだった。

 そんな態度を貫いていた僕は今になって、全部が知っていたものだと明かす。


「アイランク侯爵家を舐めないことだな」


 最も、知っていたのはアイランク侯爵家だから、という理由にしているけど。


「ここでこそこそ動いているというのは、ずっとわかっていた。そもそもとして、暗殺教団にリーベ誘拐の依頼を出したのはお前らだろう」


「……ッ!?ほ、本当に何処までっ」


 悉くを看破していく僕にミレージャは驚愕の表情で言葉を吐き捨てる。


「全部、僕の手のひらの上だよ」


「本当に……本当に恐ろしい子ですね。ここまで、コケにされたのは生まれて初めてかもしれません」


 そりゃそうだろうなぁ……自分が相手にしているのは生まれた時から知識面で最高にチートをしているカスなのである。

 勝てる方が凄いという奴だ。


「さて、ここからどう挽回しましょうかね」


 そんなことなど知るはずもないミレージャはこうなった後もどうするかについての思考を回していく。


「ん?あぁ……無駄だよ。最初から全部、こうなるのは決まっていたんだからね」


 だが、彼が抵抗するのなんて僕が許すはずもない。

 ゆっくりと、僕は自分の両手を持ち上げ、そのまま自分の手のひらと手のひらを重ね合わせる。


「何を……?」


「ミレージャには僕の魔法の実験に付き合ってもらうよ」


 警戒心をあらわにするミレージャの前で僕は両の手のひらをこする。


「世界顕現───豊穣の園」


 その瞬間、たった一つの魔法が発動させるのだった。

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