学園破壊

 殺意を感じ取った僕とリーベが立ち上がった瞬間。

 教室の窓から差し込んでくる太陽の光が途端に強くなる……否、太陽の光が強くなったのではない。


「……ッ!?」


 太陽かと見間違えるほどに巨大で、それでいて太陽よりも強く燃え盛る紅蓮の火の球が学園に向かって放たれたのだ。


「食らいつくせ」


 どれだけ大きかろうとも、放出系の魔法であれば、問題はない。

 ただ、あまりの熱さより、学園に近づけることすらも危険だと判断した僕は拡張魔法によって暴食の首を伸ばし、まだ遠くにあった火の球を暴食で消し去る。

 これで最初に放たれた火の球による脅威は消し去った。

 だが、その次の瞬間。


「ちぃ……ッ!?」


 学園へと巨大な風の暴力。

 横向きの竜巻が叩きつけられ、あっさりと魔法によって頑丈な造りとなっている学園が吹き飛ばされていく。


「……やっぱり陽動っ!?」

 

 拡張魔法で首を伸ばしている中での僕はまだ、暴食の口を増やすことが出来ていない。

 火の球を拡張魔法で食らっていた僕は風の暴力に対応することが出来なかった。


「わぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああっ!?」


「な、なぁ!?」


「各員で守れぇぇぇぇえええええええっ!」


「クソっ!?こんなことがっ!?」


「嘘だろっ!?」


 学園の床も、天井も、壁も。

 すべてが吹き飛ばされて、ありとあらゆるものが宙を舞う中で、学園の生徒たちは慌てながらも自分の命を守るために各々で態勢を整えていく。

 

「……五人」


 そんな中で、僕は今までいた三階から一階へと落ちながら襲撃者の数を数える。


「ゲーム通りだ」


 ゲーム内でもこの襲撃があった。

 学園がいきなり強者、五人へと襲われて多くの死傷者が出たこの襲撃は。


「ふぅー」


 ゲーム内でのグラースは既に今の僕ほどとは言わぬまでの周りを守れるだけの強さがあったが、そんな面倒なことなどしようとはせずにもう今日はこれで授業はないとさっさと帰宅していった。


「リーベっ!」

 

「何っ!?」


 だが、今の僕は別だ。

 同じ学園で学びをともにする学生たちが亡くなることを容認するほどに僕は薄情じゃないし、なおかつ、この場を変えられるだけの力は持っている。


「誰も殺さずに乗り切るっ!先生たちには期待せず、自分たちで現状を変えるよっ!」


「わかったっ!」


「じゃあ、行くぞぉっ!」


「おーっ!」


 僕は迷いなく戦いの決意を固め、ゲームでもこの襲撃の収束へと大いに尽力した主人公たるリーベと共に襲撃者五人へと襲い掛かっていくのだった。

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