僕がこそこそとした諜報活動を終えて、居候している王城の方へと戻ってきた僕。


「遅いよっ!こんな時間になるまで何処に行っていたの?」


 そんな僕を出迎えたのはリーベだった。

 リーベは僕の前でぷりぷりと怒りを浮かべながら、迷いなく僕を自分の部屋につれて行く。


「ごめんよぉー、ちょっと外せない野暮用が出来ちゃってー」


「……何?その野暮用って。女?」


「いやー、悪いけど、面白くも何ともないよ?ただ、学園長にあのご遺体のことで頼まれごとがあったというだけの話だよ」


「そっかー!そうだったんだぁー」


「……んな?」


 おい、何で僕の用事がご遺体に関することだと聞いた瞬間にテンションが上がったの?

 そんなに面白かった?

 ちょっとサイコパスすぎやしませんかね?


「はいはい、入ってー」

 

 なんてことを考えている間にも、僕はリーベから部屋にまで連れ込まれていた。


「何で僕は君の部屋に連れ込まれたんだ……」


 そして、そこになった僕は実に今更なことを口にする。


「お昼にグラースと会えていなかったから、グラース成分が足りなくて」


「グラース成分なんていう悍ましいものはない……僕、普通に疲れたから寝たいんだけど」


 久しぶりに隠密行動とかやったこともあって、実は結構疲れているのだ。

 もうこのまま晩飯も食べずに寝てしまいたい。そんな気分。


「駄目だよっ」


 だが、そんな僕の意見をリーベは否定する。


「ちゃんと僕の相手をしてもらわないとっ!」


「何でそれが僕の義務に入っているんですかねぇ」


 僕の知らない業務が自分に追加されている、これは如何に?

 ……。

 …………。


「僕はもう寝るよ?ちゃんと疲れた」

 

 ちょっとだけ考えた末、僕はもう寝るという判断を下す。

 うん、何も迷うことなく眠るかな。全然、バッチリ眠い。


「えぇー」


 そんな僕に対して、リーベは不満げな様子を見せる。


「よっと」


「……ッ!?」


 だが、そんなリーベの事は無視して僕はさっさと魔法で着替えを完了させ、いつも着ているパジャマ姿となる。


「おやすみだよ、異論は与えない」


「……じゃ、じゃあさっ」


「うん、何?」


「ぼ、僕と一緒に寝ない?前はよく一緒に寝ていたじゃん」


「……いや、年齢」


 リーベの姿はちょっと少女っぽいからまだ見てくれは良いかもしれないけど、男子学生二人が並んで眠っている構図はまぁまぁきしょいぞ?


「まぁ、良いや」


 とはいえだ、僕は本当に眠い。


「それじゃあ、おやすみっ」


「えっ……、はやっ」


 あっさりと同衾することを受け入れた僕はそのまま迷いなくリーベのベッドへとダイブし、そのまますぐに意識を手放すのだった。


 ■■■■■


 ごそごそ。


「……はぁ、はぁ、はぁ、グラース」


 ごそごそ。


「最低だ、僕って……」

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