諜報

 遺体の処理を終えての学園長との面会の後。

 僕は僕でクラスの方に合流するのではなく、一人で細やかな行動を始めていた。

 学園から離れ、僕は魔法で己の存在感を消しながら進んでいく。


「空間支配」


 空間系統の魔法は固有魔法ではなく、特殊属性に分類されるようなものだ。

 だからこそ、あの学園の玄関口で放置されていた女子生徒に学園の先生たちが触れられないというのは本来、ありえないことなのだ。

 女子生徒に先生たちが触れられないようにしていた魔法はただの空間系統魔法。

 先生たちのレベルにもなれば、本来、放置されている魔法くらいには干渉し、無効化出来るのが常である。

 それなのに、無効化出来ない。これは間違いなく異常事態であった。

 

「……固有魔法って、誰が使ったのかすぐにわかるのが難点だよね。僕も姿をどれだけ隠していても暴食の魔法を使えば、正体がすぐにばれちゃうし……ねぇ」


 だが、こういう異常事態の時に何を考えればいいのかというのはもう既に決まっている。

 基本的に理解できないようなものの理由は固有魔法にあるのが普通だ。

 そして、僕はそれが可能な固有魔法の持ち主に心当たりがあった。


「ミレージャ?僕は君を捉えたよ」

 

 ゲーム本編において、最初の動乱を起こした組織、そのトップに立つ男の使う固有魔法こそが無効化出来ない空間魔法の存在理由であると僕は確信していた。

 そして、更に僕はもう一つのことについての確信も深める。

 物語は、ゲームの本編通りに動き出していることを。


「うん、ビンゴ」


 ならば、その対処法として思い浮かぶものは幾つもある。


「どこまでもゲーム通りだ」


 僕は自分の前にある小さな小屋。

 そして、その小屋にかけられている魔法を見て笑みを深める。


「失礼します……」


 暴食の魔法……ではなく、うちの一族秘伝の特殊属性を用いた魔法を発動し、僕は悠々と魔法のかけられた目の前にある小屋の中へと入っていくのだった。

 ゲームの時よりももっとうまく、被害を最小限とするために。

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