処理

 あまりにも凄惨だった女子生徒の遺体。


「……」


「……なんで僕たちが?」


 その処理を今、行っているのは僕とリーベであった。


「……仕方ない、無力だったんだから」


 何故、そんなことになっているのか。その理由は非常に単純。

 先生たちが少女の遺体を処理出来なかったからである。

 とある魔法により、遺体へと近づけなくなっているせいで先生たちは何も出来なかったのだ。

 これを対処出来るのは僕とリーベだけという判断だった。それで先生たちから何とかしてくれと泣きつかれたのである。


「だとしても、僕までいる必要は」


 と言うわけであるが、リーベとしては自分まで呼ばれたことが不服だったようだ。


「……ご遺体に魂は無いからな。うっかり全部消しかねない」


 とはいえ、そのセリフは僕のものである。


「何でもかんでも食べてしまう暴食の魔法だぞ、繊細な調整なんてできるはずも無い」


 コントロール自体は完璧な自信があるけども、だからと言って絶対なものじゃない。誤差くらいはある。

 暴食は本当に扱うのが難しいのだ……これは別に僕が未熟だからというわけではない。ないったらないんだよ?


「むぐっ」


 僕の言葉にリーベは口を閉じる。

 自分の言葉がブーメランとなり、僕がこの場を後にする可能性まで考え始めたリーベは余計なことを言わないようにしているようだった。

 

「ほら、やるよ」


 とはいえ、流石にリーベを一人にするなんてことはしないけどね。


「はーい」


 今もなお、若干不貞腐れているリーベを急かしながら、僕は遺体の処理を始めるのだった……とは言ってもただ回収するだけだけど。

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