主人公の力
どこぞの悪役貴族が暴走することもなく、平和に進んでいく新人戦。
その戦いはとうとう決勝戦までやってきていた。
「決勝戦!Aクラスのリーベ・ハピスブルカ VS Aクラスのグラース・アークライト!」
新人戦において、最後に残ったのは僕とリーベであった。
「むすぅ……」
対戦相手として向かいあうリーべ。
「あれ?なんか、不機嫌?」
そんな彼がめちゃくちゃ不機嫌であることに気づいた僕は首をかしげる。
「……何でもないけど、ぶち倒して押し倒す」
「キレているじゃん、信じられないくらい」
僕、何かしたかな?
「試合開始っ!」
何てことを僕が考えていた時、試合の審判が試合の開始を宣言し、それに伴ってリーベが迷いなく動き始める。
己の手に聖光を纏わせたリーベがそのまま勢いよく自分の方に突っ込んできた。
「食らえ」
それに対して、僕はその場に立ったまま、リーベの手元で輝く聖光へと暴食を発動させる。
「……無理か」
暴食によって食らったリーベの光の刃。
だが、今でもリーベの手にはすべてを斬りさく聖光が輝いている。
これは何も僕の魔法がうまく行かなかったというわけではない。
ただ、リーベが常時展開し続けているせいで一回の暴食では消しきれないのだ。
「はぁッ!」
「よっと」
自分に向かって振り下ろされるリーベの聖光を纏った手刀を僕は暴食の力を纏わせた手で防ぐ。
そこからは純粋な格闘戦である。
リーベの聖光も、僕の暴食も、互いに打ち消し合うだけ。
僕はリーベが仕掛けてくる攻撃をすべて弾きながら、徐々に、彼が自分自身で気づかないくらいわずかに彼の態勢とリズムを崩していく。
リーベをはじく僕の手が、彼の体を支配する。
「まず……っ」
リーベが何時もの自分と少し違うことに気づいたときはもう遅かった。
「せいっ!」
強引に仕掛けた自分の拳によってリーベの体は一気に崩れ、その崩れた彼の体に僕は全力で蹴りを叩きつけて吹き飛ばしていく。
「拡張魔法───っ!」
吹き飛ばされていくリーべは、そんな中で、己の固有属性の解釈を広げ、新しき姿をこの世界に顕現させる。
「───神の再臨っ!」
リーベの背後に光り輝く巨大な女神がおぼろげながらにその姿を現し、その体に聖光を貯め始める。
「数で押し通すッ!」
そして、女神の体より大量の聖光が放たれてくる。
「……拡張魔法」
それに対して、僕も拡張魔法を発動。
「はっ……?」
首の伸びた僕の暴食の獣は女神の首を噛み切って殺し、女神より放たれた聖光は自分に当たるよりも早くに霧散してしまうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます