レイシア
第二回戦の後、僕は控室の方に回って実際の戦闘模様を観察するに留めていた。
「第二回戦Aクラスのリーベ・ハピスブルカ VS Cクラスのオワタ・カマセーヌ!」
そんな僕の前で今から繰り広げられようとしているのはリーベの試合だった……なんか、相手選手の名前、めっちゃひどくなかった?
「ねぇ」
「んっ?」
相手の選手の名前を聞き間違えたのかと感じていた僕に対し、さっきの自分の対戦相手だったレイシアがこちらへと近づいてきながら、口を開く。
「あの王子様……結局強いのかしら?ずいぶんと面白い格好をしているみたいだけど」
「いやぁ、僕も二年は会っていないわけだからね。実際のところは別にわからないよ」
すぐ隣にまで近づいてきたレイシアからちょっとだけ距離をとりながら、僕は彼女の疑問に答えていく。
「あら、そうなの」
「ただ、二年前の状態でもリーベはレイシアより強かったかなぁ。リーベ。女装したりしていて、あまり強そうには見えないけど、それでも近距離戦闘等でも普通に圧倒的と言えるような実力を持っているんだよね。その上に何でも斬るとかいうトンデモ能力。普通に強いよ、あの子は」
リーベの発育については少しばかりの不安感はあるのだが、それでも実力面で言えば順調に成長している。
少なくとも二年前までは。
「そんなに……そんなにあの子は強いの?」
「そうだね」
「……ちなみに、戦ってみたところの私のレベル感って、どんな感じだったか、一応聞いてもいいかしら?」
「四年前の僕の足元にも及ばないレベル」
「ぐぬ……っ、はっきりと言われるってこんなにもイラつくのね。今すぐにでも貴方へと殴りかかりたくなったわ」
「勘弁」
「はぁー」
闘志を燃やし始めるレイシアへと更に一歩、距離を離す僕の前でレイシアはため息を漏らす。
「私の世代の神童……レベルが高すぎるんじゃないかしら?そりゃ、誘拐されても実力一つで逃げ出せるだけの実力はあるわね。はぁー、私が輝ける日は来るのかしら」
「レイシアも結構強いからそんな自信を落とすことはないと思うよ」
レイシアもちゃんとゲームに登場するキャラの一人だ。
完全に闇堕ち化したグラースの手によって大切な親友を殺され、彼に大きな殺意を抱くようになったキャラとして。
その時のレイシアは主人公に及ぶくらいの実力はあったはず。
「ほら、氷の魔法なら微細な氷の結晶とか空気中に散布してみれば?」
レイシアの戦闘方法は空気中に微細な氷の結晶を撒くことにより、呼吸するだけでダメージを負うような状況に相手へと追い込んだうえで氷により作られた竜などによる物量攻撃を仕掛けて叩き潰すというものだった。
「えっぐいことを考えるわね……貴方」
「……」
ゲーム内でのレイシアの戦闘方法を思い出しながら語った僕に信じられないものを見るような視線を向けてくるレイシアに受け、僕は何とも言えない気持ちを抱えることになるのだった。
「……僕の戦いを見ずに、ドコゾノオンナト」
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