新人戦
簡単な一般常識に関する授業を一週間ほど受けた後、更にテストを乗り越え、僕たち新入生は新人戦へと挑んでいた。
新人戦が行われる場所は学園内部の武道場。
観客として上級生の多くが詰めかける中での試合だった。
「第二回戦!Aクラスのグラース・アークライト VS Aクラスのレイシア・グラシアス」
順調に進んでいくトーナメント。
第一回戦を順当に勝利した僕はその後、第二回戦としてグラシアス侯爵家の一人娘であるレイシアと向かいあっていた。
「ふふふ……とうとう、この時が来たわね」
僕の前に立つレイシアは不敵な笑みを浮かべている。
「これまで神童として貴方と王子様がちやほやされている中、同じ侯爵家の生まれでありながら影の薄い身として生きてきた!そんな生活も……ここでお前に勝つことで塗り替える!」
「さよか」
かなりの恨み節をぶつけてくるレイシアへと僕は軽い答えを返す。
「そのスカした表情も……今日、この時までよ!」
「開始ぃ!」
レイシアが堂々たる態度で宣言する。
その瞬間にこの試合の審判を行う男が戦闘の開始を告げる。
「氷竜ッ!」
その声を聞くと共にレイシアは魔法を発動。
何もない空間より氷で作られた暴力の化身、ただただ大きな氷の竜が現れ、そのまま自分の方へと向かって突っ込んでくる。
並みの生徒であれば、この巨大で機敏に動けること以外は特別な力などない氷の竜一つでも、簡単にノックアウトされてしまうだろう。
だが、僕は固有魔法としてありとあらゆる放出系の魔法を無効化させる暴食がある。
「これで……っ!」
ただ、既に僕は暴食という手札を見せている。
これはあくまでレイシアにとって陽動でしかないだろう。
自分に暴食を使わせている間に己の戦闘準備を整え終え、そのまま距離を詰めて近距離戦闘で勝利する算段であるのだろう……でもなぁ、僕ってば普通に近距離戦闘が得意なんだよね。
「暴食」
レイシアの魔法を一瞬で食い破った僕はそのまますぐに彼女との距離を詰める。
僕がレイシアの懐に潜り込んだ時、まだ彼女は緩慢に魔法で剣を作り、自分へと斬りかかるための準備をしているような状況だった。
「はっ……?」
一瞬で懐へと潜り込んできた僕を前にレイシアが唖然とした声を上げる。
「さようなら」
そんなレイシアの首元へと僕は手刀を叩きつけ、そのまま彼女をあっさりと気絶させてしまうのだった。
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