入学式
ひらひらとスカートを翻しながら歩くリーベ。
「何で女物の制服を着ているの?」
そんな彼の隣に立ち、リーベと共に学園の方に向かう僕は疑問の声を投げかける。
「……ダメ?似合っていない?」
「いや、似合っているけど」
「な、なら……良くない?」
「いや、別に悪いとは言っていないが……何で?っていう」
「ぼ、僕……こういう可愛い格好の方が好きなんだよね」
「……そっかー」
趣味嗜好が全然ゲームの者と違うんですけど。
これは僕の影響ですか?
僕がリーベのことを拘束しすぎたせいで、彼が多くの友達を作れなかったせいで価値観が大暴走しているの?どういうことなの。
「でも、目立ちそうではあるよなぁー」
「僕は元々王族だもん。目立つのなんて最初からだよ。今更、今更」
「……まぁ、確かに」
目立つのは最初からか。
「でも、他の王族から何か言われなかったの?」
「言われたけど、無視した。女装って基本的にはタブーだからね。僕がこういう格好をすればするほど、自分の王位は遠のいていく……自分以外の兄弟たちとしては一人でもライバルは少ない方がいいから、あまり文句は言ってこないよ」
この世界ではLGBTなどない。
同性愛とかは基本的に受け入れられないし、女装とかも好意的な目線では見られない。
「……それはちょっと僕が困るのだが」
「うぅ……ここまで仲良くしてくれているグラースに旨みを上げられないのはごめんだけど、で、でも、代わりの王族とかであれば紹介するよ?」
「おぉう……」
なんか既に主人公が王位を捨てているのだが。
父上、駄目かもしれないです。
「そ、それに、グラースは旨み、とかなくとも、僕の友達だよね?」
「まぁ、そうだけどね」
「だ、だよねっ!」
「でも、これで理解出来たわ。何で、僕が入学式の挨拶を行うように言われたのか」
入学式の一週間くらい前。
急に僕は入学式で新入生代表として挨拶をするように頼まれていた。
それが何でかと首をかしげていたのだが、その理由がようやっとわかった。
「えっ……?」
「お前が人前に立てなくなったからだな」
基本的には最も位の高い者がスピーチをするのが当然とされている中で、僕に話が来たのは一番上のグラースがスピーチ出来なくなったため、次点で高い侯爵家の嫡男である僕に話が来たのだろう。
「そ、そうなる……かな?」
「そうなるね」
「そっか……入学式の新入生の挨拶はグラースがやるのか」
「お前の代わりにね」
「た、楽しみにしているねっ!」
「お前にそれを言われるのはちょっと癪。本当はお前の仕事のはずなんだが」
「うぅ……」
僕は女装しているリーベと言葉を交わしながら、入学式が行われる学園の方に向かっていくのだった。
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