制服

 背丈は伸びない。

 友達は出来ない。

 そんな色々と不安の残る主人公へと成長しているリーベであるが、それでもゲームの本編は訪れる。

 

「んー、久しぶりに制服なんて着るわ」


 早々にゲームの本編が始まる舞台であるアーデル学園の入学式が始める日となっていた。

 その当日の朝になってようやく始めて制服へと裾を通していく。

 制服を着るのは前世以来なので、本当に十数年ぶりとかになってくる。


「マジで前世のままだな」


 制服姿で鏡の前に立った僕は率直な感想を呟く。

 前世のままというのは自分の顔ではなく、制服のことだ。

 アーデル学園の制服は西洋風なファンタジーをこの世界観にまるで合わない日本の高校とかの制服そのままなのだ。

 この世界そのものが日本のゲーム会社が作っているものなので制服が似てくるのも……いや、日本のゲーム会社が作っているものだとしても、もうちょい工夫してくれや。

 いくらなんでもそのまますぎる。


「まぁ、良いや」


 とはいえ、既にこの世界には慣れ切った身。

 今更、自分の格好によって世界観が崩れたぐらいで失望を覚えるほどにこの世界に新鮮な気持ちを持っていない。

 まぁ、よしとしよう。


「そんなことより、楽しみなのはリーベの制服姿よな」


 別に今、鏡の前にいる僕の姿はゲームで普通に嫌いだった悪役のものだ。

 これを見たところでさほどテンションは上がらない。

 そんなことよりも、好きだったゲームの主人公のリアルな制服姿の方がかなり気になってくる。


「着替えたー?」


「ちょっと待ってね」


 そんな思いより、僕はカーテンで仕切られている自分の前にあるベッドの方へと声をかける。

 今、僕が制服を着替えていた場所はリーベの部屋だ。

 下着姿を見せるのが恥ずかしいから、とカーテンで仕切ったベッドの中で着替えているリーベと同じ部屋で制服へと着替えていたのだ。


「よしっ!終わったよ」


 ベッドの方でごそごそとしていたリーベから着替えが終わったという声が聞こえてくる。


「……じゃ、じゃあ、見せるね?」


「うん」


 なかなかカーテンを開けてくれないリーベの声に僕は頷く。

 

「えいやっ!」

  

 それを受け、ようやく僕の前へと姿を現したリーベ。

 その体を覆っていたのはゲームでもよく見た制服のデザインそのまま。

 ただし、その制服のデザインはゲームでリーベが着ていた男用のものではなく、スカート姿の女用のものだった。


「……何で?」


 僕は当たり前みたいな表情で女物の制服を着ているリーベを前に、宇宙猫のような表情を浮かべながら困惑の声を漏らすのだった。

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