帰宅

 暗殺教団のトップであるオルガンを僕は何とか振り切ってヘーリオス王国の王都にまで戻ってくることに成功していた。


「ふぅー、何とかなって良かった……んで、これからは、と」


 自分たちが戻ってきたヘーリオス王国の王都。

 そこでは今なお、混乱が残っていた。


「うひゃぁー」


 流石に王城へと襲撃を仕掛けていた黒ローブの男たちはしっかりと撃退しているが、それでも襲撃を受けた部分の修復はなされていない。

 そして、王子が連れ去れるという失態まで起きている。

 それに対しててんやわんやとなっているのか、多くの人たちが王都内で慌ただしく動いているのが上空から見て取ることが出来る。


「……この中でいきなりリーベと戻るのは無理だな」


 餓鬼二人でツッコんでいけるようなものじゃないな、これ。

 ここで僕が軽はずみにリーベと共に王城へと向かえば大変なことになってしまう。


「えーっと……リーベ。まずはアークライト侯爵家の屋敷に行っていいかな?」


「うん、大丈夫だよ。僕はグラースに全部、任せるよ」


 僕の腕の中で抱きかかえられているリーベは自分の言葉に頷く。


「ありがとう。よし、それじゃあ、まずはアークライト侯爵家の方に」


 いきなりの王城は無理。

 ということで、王城と同じく嫡男が誘拐されたことで騒然となっている王都内にあるアークライト侯爵家の屋敷の中庭へと僕は上空から降りる。


「ぐ、グラース様っ!そ、それに第三王子殿下!?」


 中庭へと降り立った僕。

 それに真っ先に気づいたのは僕も見たことのあるうちのメイドだった。


「あまり騒がないでほしいな。ちょっと、自分たちの立場も複雑のはわかるでしょう?」


「え、えぇ……それにしても、よくぞご無事で」


 僕の言葉に頷くメイドは恭しく頭を下げながら、自分たちの無事を喜ぶ。


「うん。それで、父上の方に話を通してもらえるかな?まだ、父上は王都にいるよね?」


「えぇ。ずっと、グラース様を待っておりましたよ」


「それならよかった。じゃあ、とりあえず僕は自分の部屋に向かうから。父上の準備が終わったタイミングで呼んでくれ」


「んっ……?」


「承知いたしました」


 僕の言葉に頷いたメイドは小走りで屋敷の方へと向かっていく。


「それじゃあ、リーベ。一旦は僕の部屋に行こうか……いきなり、戻ってきたと言われても対応を考えるのにある程度の時間はかかるだろうから」


「ふぇ?」


「どったの?」


 そんな中で、何故か頬を赤く染めながら立ち止まり始めたリーベを前に僕は首をかしげるのだった。

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