迷宮創造

 腕を断たれ、僕の蹴りによってごっそりと魔力を奪われたオルガン。


「ちぃっ!」

 

 そんな彼は舌打ちをしながら後ろへと下がっていく。


「ナイス、リーベ」


「ぼ、僕。役に立った?」


「もちろんっ!マージでナイスっ!」


「はぅっ!?」


「ほーんとに助かったよぉ」


 それを横目で眺める僕は完璧なアシストを見せてくれたリーベへと抱き着いて、頬をすりすりさせることで感謝の意を示す。

 マジで助かった。

 今のリーベのアシストがなければもう負けていた可能性だってあったかもしれない。

 本当に神だった。もー、なんて可愛い奴だろうか。本当に助かった。


「ぬぅんっ!俺がこの程度で負けると思うなよ?」


 そんなことをしている僕たちの前で、オルガンが不敵な笑みを浮かべながら魔法によって失われた腕を再生させていた。


「ずいぶんと、魔力が減ったようだね」


「……あっ」


 それを見た僕はリーベから離れて彼の方に笑みを向ける。

 僕の蹴りに、再生魔法。

 それらの二つによって、オルガンはかなりの量の魔力を失っている。


「オルガン。お前の固有魔法。それは迷宮創造。そうだろう?お前の一族が代々受け継いでいる……そんな魔法だ」


「……ッ。てめぇ、マジでどこまで知っていやがる?」


「だから、言ったろう?すべてだと」


 僕は笑みを絶やさぬままに言葉を続け、そして、これまで発動し続けていた魔法を一つ、解除する。


「この地下アジト自体。その迷宮創造で作ったものだ……それには、どれだけの魔力がかかったんだろうね?」


 オルガンの固有魔法である迷宮創造は圧倒的チート能力だ。

 今、自分たちが立っているこの場所をたった一つの魔法が作った。その事実だけで驚異的なのがわかるだろう。

 ただし、その代わりとして大量の魔力を消費してしまうわけだが。


「……だから、何だ?」


「今、迷宮創造の魔法は使えないだろう?」


「だからどうした。あれは直接向かい合っての戦闘には使えねぇ……一体、何を考えてやがる?」


 この時点で、オルガンは気づいているだろう。

 僕が最初から迷宮創造が使えなくなるくらいに彼の魔力を消費させるための戦いに終始していた、と。

 だが、そうしたことの意味がわからないといった様子のオルガンはこちらへの警戒心を強めている。


「ねぇ、何か。ここら辺、揺れている感じがしない?」


 そんな彼に、僕は確信に迫ることを告げる。


「ァ?……っ!?まさかっ!」


「そのまさかだよっ」

 

 驚愕するオルガンの言葉に僕が頷いたその瞬間、この場の床や天井、壁に大きな亀裂が入り始めるのだった。

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