激闘

 隣に立つリーベを守る関係から僕はその場を動くことは出来ない。


「しぃっ!」


「無駄っ」


 そんなこんなで僕はひたすらに相手の使う遠距離攻撃を暴食で食らい、自分に近づいて来ようとする場合は大鎌で牽制するという害悪プレイに徹していた。

 自分の血肉を練りこんで作ってある大鎌は触れるだけで魔力を奪う特別仕様である。

 オルガンが僕の方に近寄って拳を振るおうとしても、自分の鎌を前にしてうまく近寄ることが出来ていない。


「クソがッ!?何とも嫌らしい餓鬼だっ!」


「それは僕にとっての誉め言葉だよっ!」


 厭らしい戦いを極めつつあるのが僕という人間だからね。


「ちぃ、おらぁっ!」


 そんな僕に対して、オルガンは本格的に怒涛ともいえる攻撃を叩きつけてくる。

 オルガンより放たれる火、水、風、土、氷、雷……多種多様で大量の魔法が僕へと叩きつけられる。


「……ちっ」


 僕が暴食で食いきれる量にも限りがある。

 胃の容量は無限なのだが、すべてを食らう口には限りがあるのだ。

 今のところ、僕が同時に展開できる暴食の口の数は十であり、それ以上の魔法を一度に叩きつけられると限界を迎えてしまう。

 食べられる分は暴食で解決し、それ以外のところは結界等で対処していく。


「しぃっ!」


 そんなことを僕がしている間に、オルガンは魔法に紛れて自分との距離を詰めている。


「……多いなぁ!?」


 自分の前にいるオルガンが魔法で生み出し、自分の周りに浮かせている武器の数はざっと数えて百近く。

 これを暴食ですべて食いきるのは無理だ。


「このまま押し込ませてもらうぜぇ!」


「……ッ」


 僕は手元にある大鎌でオルガンより振るわれる武具の数々をはじき、魔法で武具を破壊し、暴食で食らっていく。

 だが、その間にもオルガンが魔法で武具を作り続けている最中だった。


「魔力量が多いなぁッ!?」


「はっはっは!」


 既に大量の魔法を使っているオルガンの魔力量は全然減っていない。

 まだまだ大量に残っている。なんと、面倒なことか。

 僕は眉をひそめながら、オルガンの攻撃を捌き続けていく。

 そんな中。


「えいっ!」


 急に自分の隣にいたリーベが魔法を発動させる。


「おっとぉ?」


「ぐぬっ!?」


 リーベの魔法。

 それはずいぶんとゲームでお世話になった、彼の固有魔法の雛形とも言えるようなものだった。

 ありとあらゆるものを破壊する光の刃、よりも少しだけ威力が低いもの。

 それがリーベより放たれ、完全に警戒していなかったオルガンの不意を打って彼の右腕を斬り落としてしまう。


「えいっ!」


 そんなものが再度、オルガンに向かってリーベから放たれる。


「クソっ!?」


 既に右腕を斬り落とされているオルガンは必要以上の回避行動をとった結果、リーベの魔法を避けることには成功したけども、僕の前で致命的な隙を晒していた。


「隙ありっ!」


 それを見た僕は迷いなく全力の暴食を展開しながら彼に向かって蹴りを叩きこむのだった。

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