中層

 地下アジトを進むこと約三時間程度。


「大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ。僕も一応、ある程度は鍛えているから……走っているだけなら大丈夫」


「それならよかった」


 僕たちは今、ようやくになって最下層の地下牢から半分くらいまでの位置に上がってきていた。


「さて、と」


「……なんか、随分と威圧感のある扉だね」


 そんな僕たちは今、巨大な扉の前に立っていた。


「おそらくだけど、ここが一番の関門になるかな」


「そうなの?」


「うん」


 この扉の向こう。

 そこにあるのはここのボスが根城している、いわばボス部屋のようなところである。

 本来、ここのアジトの攻略ルートは一番上から下に向かっていくものとなっている。

 ゲームの主人公もその例に漏れず、一番上から攻略していき、地下アジトの中盤にあるここのボス部屋で組織のトップと激闘を繰り広げたのだ。

 じゃあ、ここまで僕とリーベが昇ってきた階層は一体何だったのかというと、地下アジトのメンバーが暮らしている住居地となっている。

 だからこそ、ここまで僕とリーベは特に罠などにもあうことはなくここまで楽に来られたという面がある。

 一番上からの場合、その行く手には黒ローブの男たちの他にも、多くの罠が待っているからね。


「ふぅー」


 僕は息を吐き、これまで発動し続けていた魔法のいくつかを解除する。

 もう、索敵の魔法さえも解除し、たった一つの魔法以外を除いて、余計なものは何一つも使っていない状態にする。


「行くよ、リーベ。覚悟はいい?」


「ま、待って……?僕はこの先に何がいるのか聞いていないんだけど?」


「敵だよ、敵。それもとびっきりの」


「えっ……?」


「でも、大丈夫。リーベのことは絶対に守るから。安心して、僕を信じて」


「……ッ、う、うん。分かったよ。僕はグラースを信じるから。これからも、ずっと」


「ありがとう」


 僕の目的はたった一つだ。

 それさえこなせれば勝ち。

 大丈夫、問題はない。僕なら出来る。


「ふぅー」


 僕は深く息を吐く。


「よし、行こうかっ」


 そして、僕は素早く地面を蹴り、そのまま自分の前にあった扉へと全力で横蹴りを叩きつける。

 僕の蹴りは実に容易く巨大な扉を部屋の中へと吹き飛ばした。


「うおっ!?」

 

 そのままの勢いのまま、僕はリーベと共に扉を超えたボスのいる部屋の中へと入っていく。


「んだっ!?お前らっ……って」


 そこで僕とリーベを待っていた者。

 それは。


「王子様とその連れじゃねぇか。んで、ここにいやがる?」


 ゲームでも出てきた、この組織のトップに立つような男だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る