襲撃
「グラースは自分の強さに自信ある?僕は魔法とかはともかく、剣を振ったりするのは苦手で……」
「んー、僕は結構自信あるよ。剣も、魔法も。大人が相手だとしても負けないよ」
「おー!そ、それはすごいねっ!」
「まぁね……ちょっと精神年齢面でズルしているところがあるからだけど」
「んっ?なんて?」
「何でもないよ」
バルコニーで雑談を繰り広げている僕とリーべ。
僕たちの中にはずいぶんと穏やかな時間が流れていた。
「……んっ?」
そんな中で、何か不穏な空気感を感じ取った僕は視線を素早く動かしてこの場の確認を始める。
「どうしたの?」
「いや……」
そんな僕を見て疑問の声を上げるリーベに対して、曖昧な態度をとる僕は───。
「あぶねぇっ!?」
───自分の隣に立っていたリーベを押し倒してそのまま体を地面に伏せさせる。
「はぇっ!?」
その次の瞬間。
自分たちの上空を一筋の閃光が通り過ぎ、バルコニーとパーティー会場を隔てる壁を貫通する。
「うわっ!?」
「何奴!?」
「この……っ!?」
そして、その次にこちらを遠巻きに確認していた王子の護衛をしている連中が倒されていく声が聞こえてくる……なんで普通に負けているのよっ!
「いたぞ」
僕は呆けているリーベを強引に引っ張って壁にまで移動させたタイミングでバルコニーへと真っ黒なローブで姿かたちを隠している集団が三人ほどやってくる。
「ぐ、グラース」
「ご心配なく」
ちぃと展開が急すぎやしませんかねぇ?こんなイベントゲームにはなかった気もするんだけど?
そんなことを考えながら僕はリーベの前に立ち、静かにローブの男たちを睥睨する。
「……」
そんな中で、最初に動いたのはローブの男たちだった。
彼らは迷いなく、一切の音もたてぬ動きで自分の方へと迫ってくる。
「はぁッ!」
それに対して、僕は先手を打つ。
少しばかりこちらを軽んじるような、舐め腐った態度を持っていたローブの男たちへと牙を剥く。
僕はまず流れるような動きで足を振り上げ、ローブの男の顔面を強襲。
上から下へと振り下ろして地面にたたきつけ、まずは一人目の男を気絶させる。
「「……ッ!?」」
そして、そのまま二人目、三人目に襲い掛かっていく。
「くっ!」
僕が一人目を一蹴したことで警戒心をもち、防御の姿勢をとった二人目に対して横蹴りを叩きつける。
「ごふっ!?」
魔法によって強化された僕の身体能力から繰り出される蹴りは容易に二人目の両腕の骨を粉砕し、弾き飛ばしてしまう。
「燃えよ、炎獅子」
「うわぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!」?
両腕が使い物にならなくなってしまったローブの男へと僕は獅子を象った炎を叩きつけ、容赦なく燃やしていく。
「……後一人」
そして、僕は三人の中で残った一人を睨みつける。
既に彼は万全の態勢で最大限の警戒を見せているところだった。
「餓鬼一人を相手に何を戸惑っている」
あと一人を僕が倒すために動き出そうとした瞬間。
増援として更に追加で五人のローブの男たちがバルコニーへとやってくる。
「……っ」
敵が増えた。
それは純粋にこちらの趨勢が悪くなったことを意味するわけだが……自分の方には助けが来てくれるだろうか?
「……これは無理だな」
何処から来た連中なのか。
普通にパーティー会場にも侵入し、魔法を使いこなす歴戦の猛者たちである王侯貴族を相手に大立ち回りしているローブの男の暴れっぷりは凄まじい。
これはもう、しばらくの間は僕たちの助けに誰も入ってこれないだろう。
希望はなかった。
「退路はなし」
バルコニーの周りにはこちらを囲むようにローブの男たちが空を浮いている。
この包囲網を逃亡することは中々困難……というよりも、不可能に近いだろう。
今、目の前にいる六人を倒したとしても、周りにいるローブの男たちが次の僕の相手をしてくれるだけだろうし……何よりも、そもそも今、前にいる奴らを相手に勝てるかどうかも怪しい。
僕は同年代の中では飛びぬけた強さを持っていると自負しているが、所詮はまだ八歳児なのだ。
ガチガチに殺し合いの為に鍛えてきた大人たち複数を相手とするのは流石に荷が重い。
「完全に詰みかも」
これはダメだな。
そう判断した僕は自分の後ろに立っているリーベの体を強引に抱き寄せていく。
「んっ……」
「はん……ッ!?」
そして、迷いなく口付けを交わし、強引に己の舌をリーベの口へとねじ込んでいく。
「ほう?そういう関係だったか……ならば、共に来ると良い」
そんな中で、僕たちを囲んでいるローブの男たちは魔法を発動。
口と口を合わせあっている僕たちは抵抗することも出来ずに魔法の集中砲火を食らい、一気に視界が真っ白に染まるのだった。
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