二人で

 多くの人々が行き交い、多くの思惑をもって会話が広がっているパーティー会場の中で。


「んっ。美味しいですね。これ」


「う、うん……おいしいっ」


「やっぱり野菜って良いよね。健康にもいいし」


「だよねっ……なんか、僕が野菜好きだと言っても変な反応ばかりされるんだよ。ひどくない?」


「野菜なんて健康に良いんだし、それが好きであるのに駄目なことは何もないよ」


「だよねっ!」


 僕とリーベは共にサラダをモグモグ食べて満喫していた。

 完全に二人だけの空間が出来上がっている中で。


「この産地は何処でしょう?やっぱり農業で名高いオヤサイ子爵家のものでしょうか?」

 

 僕はリーベへと話しかけていく。


「そう、じゃないかな。父上はそう言っていたはずだよ……あ、後。僕に、敬語は使わなくていいよ?もっと、フラットに、仲良い関係になりたいから……っ!」


「そう?それなら遠慮なく……リーベって言わせてもらうね?同い年だし」


「う、うん……っ!それでっ!」


 僕の言葉にリーベは嬉しそうに頬を緩め、朱に染めながら頷く……よしっ、これで主人公にとって初めての友達という立場は確立出来つつある。

 これで僕がよっぽど悪いことしなければ、まず死ぬような運命を辿ることにはならずに済むのではないだろうか?


「それで、リーベ。何か、飲み物貰いに行かない?喉乾いてくるでしょ」

 

「そうだねっ」


 僕はリーベと共に飲み物を貰いに行く。

 今回のパーティーは子供も多く参加するということでアルコール類以外の飲み物も豊富に用意されている。

 僕はアップルジュースを貰い、それに倣ってリーべの方も自分と同じものをもらう。


「ね、ねぇ……このまま一緒にバルコニーの方に出ちゃわない?今日の夜空は綺麗だよ?」


「そうだね、そうしようか」


 そして、そのまますぐにパーティー会場からバルコニーの方へと出てくる。

 そこで僕とリーベは飲み物を飲みながら他愛もない雑談に花を咲かしていく。


「うー、何で僕は七歳まで閉じ込められていたんだ……あの時間はずっと」


 数十分もした頃にはリーベの緊張も解け、生き生きと自分の言葉を話せるようになっていた。


「そうだね。それは辛いよね」


「ほんとだよっ!こんなの不当だよぉ」


「まぁ……それっばかりは仕方ないよ。王族というのは多くの危険が伴うからね。リーベが死んだらどうしようもないからね」

 

 歴史上で幼年期に亡くなった王族はかなり多いからね。

 外側、というよりも王位継承戦でライバルが増えることを危惧する他の王子の陣営がまだ魔法に対する抵抗の弱い赤ん坊に呪いをかけて殺していく例が数多あるのだ。悲しいことにね。

 基本的な貴族家は長男が継承する形なのに対し、この国の王族は長男優位という形にはなっているが、それでも弟たちも全然国王になることも出来る。

 歴史上には第32王子。既に中年の域にいた王太子を押しのけて十代の国王が誕生することもあった。

 これより、王位継承戦はかなり血が流れるドロドロとしたものになる可能性が高く、赤ん坊にも平然と被害が及ぶほどなのだ。


「それでも不満な不満なんだよぉ」


「こうして僕と話したりも出来ないわけだからね。それは嫌でしょ?」


「う、うんっ。そうだねっ!……でも、もう少し前から、友達になりたかったかなぁ」


「おっ、随分と嬉しいことを言ってくれるね。それでも、これからから紡いでも遅くはないと思うよ。死ぬまで関係を続けるとしたらまだまだ途方もないからね」


「た、確かに……じゃあ、ずっと一緒にいようねっ」


「もちろん。僕は国王家に忠誠を誓う貴族家の嫡男だからね」


 そうだよ?僕は忠臣だよ?だから、殺さないでね。


「うん……っ!」


 そんな考えを持つ僕はバルコニで、共にアップルジュースを持つリーベと穏やかな時間を過ごすのだった。

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