第6話 おやすみ
「そろそろ寝よっか。ベッドに入って良い?」
(布団を捲って中に入る音)
「お邪魔しまーす。……ふふふっ、やっぱりこのベッド狭いね。落ちちゃいそう」
「でも、こうやってくっついていれば平気かぁ」
「ぎゅー……」
「あったかいねー」
「体温も、心臓の音も、匂いも、全部落ち着く」
(心臓の音)
「私ね、こうやってぎゅってしている時間が一番幸せ。落ち着き過ぎて、なんだか眠くなっちゃう」
「え? ヨシヨシはって? ヨシヨシしないと眠れない? ふふっ、赤ちゃんじゃん」
「いいよ。ぎゅーってしながら、頭撫でてヨシヨシしてあげる。おいで?」
(布が擦れる音)
「ヨシヨシ、いい子、いい子」(耳元で囁くように)
(頭を撫でる音)
「耳元で喋ったらくすぐったい? 耳弱いんだね。知らなかった」
「ヨシヨシ、いつも頑張って偉いね」
(頭を撫でる音)
「大丈夫、大丈夫」
(頭を撫でる音)
「だんだん眠くなってきた? 全然? じゃあもうちょっとお話しようか」
「ヨシヨシ、いい子、いい子」(耳元で囁くように)
(頭を撫でる音)
「大丈夫、大丈夫」
(服が擦れる音。彼女を抱き寄せる)
「ん? どうしたの?」
「ちょっとだけ話を聞いてほしい? 上手く伝わるか分からないけど? いいよ、聞くよ」
(数秒の沈黙)
「うん……うん……そっか。そんなことがあったんだね。話してくれてありがとう」
「頑張ってるのに報われないのって辛いよね。私も似たような経験したことあるから、ちょっと分かる気がする」
「多分……だけどさ、今は神様が
「ふふふっ、誰目線なんだよって? わかんない」
「ごめんね。やっぱり私には、役に立つようなアドバイスはできそうにないや」
「私にできるのは、ひたすらヨシヨシすることくらい。ごめんね、あんまり役に立たない彼女で」
「ん? 十分役に立っているって? 本当? そう言ってもらえると嬉しい」
「もっと役に立ちたいから、いっぱいヨシヨシしてあげる。眠くなるまで頭撫でてあげるから。目を閉じて?」
「ヨシヨシ、いい子、いい子」
(頭を撫でる音)
「大丈夫、大丈夫」
(頭を撫でる音)
「自信を持って。いつかきっと上手くいくから」
(頭を撫でる音)
「ヨシヨシ。大丈夫だよー」
「眠くなってきた? いいよ。このまま寝ちゃっても」
「大丈夫だって。寝た後に帰ったりしないから。朝までここにいるよ? だから安心して」
「ヨシヨシ、いい子、いい子」
(頭を撫でる音)
「大丈夫、大丈夫」
(頭を撫でる音)
「ヨシヨーシ」
「……もう、寝ちゃった? おーい。……寝ちゃったみたいだね」
「ふふっ、寝顔可愛いっ。ほっぺ、つんつん。うしししっ、ちゃんと寝てるね」
「ヨシヨシ。いい子、いい子」
「こーんな近くで寝顔が見られるなんて幸せだなぁ」
「ずっと好きだったから、こうして傍に居られるだけですごく嬉しい。私と付き合ってくれてありがとね」
「ヨシヨーシ。可愛いね」
「別にさ、特別になろうとしなくてもいいんだよ? みんなから尊敬される人にならなくても、お金持ちにならなくても、いまのままでも十分素敵なんだから」
「頑張るのは立派なことだけど、頑張りすぎてボロボロになって壊れちゃうのだけはいや。そうなる前に、頼ってね」
「約束」
「……って、寝てるから伝わらないか」
「ふぁぁ~、私も眠くなってきちゃった。寝よ」
(布団を引き寄せる音)
「今日も一日お疲れ様。おやすみなさい」
(ちゅっとキスをする音)
「大好きだよ」
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