第5話 そろそろ帰るね

「もう遅いからそろそろ帰るね。今日は泊まるつもりで来てなかったから、着替えとか準備して来なかったんだー……」


「本当はもっと一緒にいたかったけど、明日も早いから……。今日はこれでバイバイだね」


「私がいるとよく眠れないでしょ? 今日は疲れているみたいだから、一人でゆっくり休んだ方が良いよ」


「何かあったらいつでも連絡して。愚痴でも何でも聞くから。アドバイスは……あんまり期待しないでほしいけど……」


「じゃあ帰るねっ! 今日は会えて嬉しかった! 次はさ、美味しいものを食べに行こ! そしたらもっと元気出るよっ」


「ん? 最後にもう一回ヨシヨシしてほしいって? ふふふっ……いいよ。おいで」


「ヨシヨシ、いい子、いい子」


(頭を撫でる音)


「大丈夫、大丈夫」


(頭を撫でる音)


「今日はさ、連絡くれてありがとう。こんなことくらいしかできないけど、ちょっとは役に立てたかな?」


「役に立ってる? それなら良かったぁ」


「いつもはさ、助けてもらってばっかりだから、お礼がしたかったんだ。だから役に立てて嬉しい」


「ヨシヨシ、いい子、いい子」


(頭を撫でる音)


「いつもありがとね。感謝してるんだよ?」


(頭を撫でる音)


「……これ以上いると離れたくなくなっちゃうからそろそろ帰るね」


「バイバイ。おやすみなさい」


(ベッドの軋む音と服を掴む音)


「ん? どうしたの? 急に袖掴んで……」


「帰らないで? もしかして一人じゃ寝られない? うんって……そんなこと言わないでよー……」


「私だって、もっと一緒にいたいよ? でも帰らないとー……」


「そんな目で見ないでよ~っ! 帰りたくなくなっちゃじゃん」


「ええー……どうしよう……。明日早く起きて、一度家に戻って、それから出掛けて……。ううん……できなくはないかー……」


「分かった、いいよ。今日は泊まっていく」


「無理言ってごめんって? いいって、いいって! そんな申し訳なさそうな顔しないで! もっと一緒にいたいのは私も同じだし」


「それにさ、今日はたくさん甘えてもいい日って決めてたから、わがまま聞いてあげてもいいかなって」


(近くまで歩いてくる音)


「それじゃあ今日は一緒に寝よっか。眠くなるまでぎゅーってしながら、たくさんヨシヨシしてあげる」(耳元で囁くように)

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